再下請負通知書とは|一人親方が応援を呼ぶとき、先に確かめる3つのこと
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現場で人が足りない日に、応援に来てもらうことがありました。
手配していたのは会社です。ただ、声をかけるのは現場でした。応援に来てくれている職人さんに「この日、ここ来れる?」「空いてない?」と聞く。電話やLINEで聞くこともありました。
来てくれたのは、知り合いの一人親方や、他社に勤めている職人、元同僚。私は書類のやり取りには関わっていませんでした。
独立して一人親方になると、この「来れる?」の後ろに、契約の話と書類の話がついてきます。再下請負通知書は、そのときに出てくる書類のひとつです。
ただし、応援を呼べば必ずこの書類が要る、というわけではありません。 そこから整理します。
この記事でわかること
- 応援を呼ぶとき、先に確かめる3つのこと
- 再下請負通知書が必要になる現場・ならない現場
- 「応援」の契約関係は、呼び名では決まらないこと
- 何を準備して、いつ出すのか

先に確かめる3つのこと
応援を頼む前に、確認しておきたいことが3つあります。
- この現場は、施工体制台帳を作る工事か(元請に聞けば分かります)
- 応援に来てもらう相手と、どういう関係で仕事をするのか(請負か、雇用か、それ以外か)
- その関係が、建設工事を請け負わせることになっているか
このうち、法律上の通知義務が生じるのは、1と3がそろったときです。
- 施工体制台帳を作る対象の工事であること
- その工事を、さらに別の建設業を営む者へ請け負わせたこと(建設業の許可を持っていない人も含みます)
2は、3を判断するための前提です。「応援」という呼び名のままでは、請け負わせたことになるのかどうかが決まりません。
なお、法律上の義務がない場合でも、元請の運用で書類を求められることはあります(後述します)。
再下請負通知書とは
工事を請け負った下請が、その工事をさらに別の業者に請け負わせたとき、元請にそのことを知らせる書類です。
根拠は建設業法第24条の8第2項にあります。
前項の建設工事の下請負人は、その請け負つた建設工事を他の建設業を営む者に請け負わせたときは、(中略)同項の特定建設業者に対して、当該他の建設業を営む者の商号又は名称、当該者の請け負つた建設工事の内容及び工期その他の国土交通省令で定める事項を通知しなければならない。
読みにくい条文ですが、言っていることは単純です。下請がさらに下請に出したら、元請に知らせなさい。
元請はこれを集めて、施工体制台帳という一覧にまとめます。誰がどの工事をやっているのかを把握しておくための仕組みです。
通知する相手は、施工体制台帳を作る元請です。自分に仕事をくれた会社ではなく、発注者から直接工事を請け負った会社を指します。ただし実務では、すぐ上の注文者を経由して渡す場合もあるので、どこへ出すかは元請または注文者に確認してください。
① この現場は、対象の工事か
条文をよく読むと、通知の義務があるのは「前項の建設工事の下請負人」です。つまり、施工体制台帳が作られる工事に限られます。
では、どんな工事で作られるのか。
| 施工体制台帳を作る条件 | |
|---|---|
| 民間の工事 | 元請が特定建設業者で、その工事で結んだ下請契約の総額が5,000万円以上(建築一式工事は8,000万円以上) |
| 公共工事 | 金額にかかわらず、元請が下請契約を結んだ時点で必要 |
民間工事の金額は、建設業法施行令の第7条の4で決まっています。インターネット上には「4,500万円(建築一式7,000万円)」と書いてある記事が多くありますが、現在の政令は5,000万円(建築一式8,000万円)です。 古い金額のまま更新されていない解説が残っているので、金額を判断に使うときは気をつけてください。
公共工事のほうは、入契法(公共工事の入札及び契約の適正化の促進に関する法律)の第15条で、金額の条件が「下請契約を締結した」に読み替えられます。
この金額は、自分の受注額ではありません
ここを取り違えると、判断がまるごとずれます。
5,000万円というのは、元請がその工事で結んだ下請契約の総額です。 自分がいくらで請け負ったかではありません。20万円の仕事で入っていても、その現場全体で下請契約が5,000万円を超えていれば、対象の工事になります。
そして、現場全体の金額は、一人親方には分からないことが多いはずです。 分からなくて当然です。
だから、自分で金額を判定しようとしなくて大丈夫です。 元請に「この現場、施工体制台帳の対象ですか」と聞けば済みます。対象工事かどうかは、元請へ確認する。それで足ります。
法律上の義務と、元請のルールは別
対象外の工事でも、元請が自社の施工管理として同じ様式や似た書類を求めることがあります。
このとき出すのは、法律で決まっているからではなく、その現場のルールだからです。どちらであっても、様式と必要な項目、提出先を確認して対応するという進め方は変わりません。ただ、「法律で必要なのか、この元請のやり方なのか」を分けて理解しておくと、聞き方が変わります。
② 誰が誰に通知するのか
言葉だけだと分かりにくいので、架空の登場人物で並べます。ここでは、A社の工事が施工体制台帳を作る対象であるとしています。
- A社:発注者から直接工事を請け負った元請
- B社:A社から工事を請け負った一次下請
- Cさん:B社から型枠工事を請け負った一人親方
- Dさん:Cさんが工事の一部を任せた一人親方
このとき、こうなります。
| 誰が | どうなるか |
|---|---|
| B社 | Cさんについて、A社へ通知する側 |
| Cさん | B社が出す通知書に載る側 |
| Cさん(Dさんに請け負わせたら) | Dさんについて、A社へ通知する側にもなる |
一次下請から請負で仕事を受けているだけなら、載る側です。対象の工事で、自分が誰かに請け負わせたときは、同じ人が通知する側にもなります。工事が対象外であれば、法律上の通知義務はありません。
「載る側なら何もしなくていい」ではありません
通知の義務がB社にあっても、自分の情報は自分しか持っていません。
許可番号、保険の加入状況、主任技術者として届け出る人。こうした欄は、本人が書いて返すか、聞かれて答えることになります。技術者の要件は自分で決めずに、必要かどうかと条件を元請に確認したうえで答えてください。「載る側だから関係ない」と構えていると、現場が始まる前に慌てます。
③ 「応援」の契約関係は、呼び名では決まらない
ここがいちばん間違えやすいところです。
現場では、どんな形でも「応援」と呼びます。ですが、中身は別物です。確認しておきたい主な形は、次の3つです(ほかにも制度上の形はありますが、ここでは代表的なものだけ挙げます)。
(1)別の事業者に、仕事として請け負ってもらう
仕事の範囲を決めて任せ、その成果に対してお金を払う形です。相手が一人親方でも、会社でも同じです。
相手が会社の場合、その会社が自社の従業員に指示を出して施工します。注文した側は、相手の従業員に直接指示を出しません。 これが、会社どうしの請負として成り立つ形です。
建設工事の請負にあたれば、対象の工事では再下請負通知の話になります。
(2)自分が人を雇う
自分が雇用主になり、自分の指示で働いてもらい、賃金を払う形です。この場合は再下請ではなく、自分の労働者として作業員名簿に載ります。
(3)請負の形をとりながら、相手の従業員に自分が直接指示している
ここが要注意です。
他社に雇われている人が、その会社との雇用関係を保ったまま、こちらの指揮命令を受けて働く。これは労働者派遣にあたる可能性があります。
そして、建設業務への労働者派遣は、法律で禁止されています。労働者派遣法の第4条第1項第2号に、建設業務が挙げられています。
さらに同条第3項では、受け入れる側も、指揮命令の下でこれらの業務に従事させてはならないとされています。つまり、送る側だけの問題ではありません。
他社の職人に来てもらうこと自体が問題なのではありません。 (1)の形、つまり会社に請け負ってもらい、指示はその会社が出す。この形が守られているかどうかが分かれ目です。
なお、会社どうしで応援の取り決めがあっても、その名前だけで適法になるわけではありません。実際の契約と、誰が指示を出しているかで見られます。
呼び名ではなく、実態で判断されます
(1)〜(3)のどれにあたるかは、契約書につけた名前では決まりません。
誰が作業の指示を出しているか、報酬をどう決めているか、仕事を断る自由があるか、道具は誰の負担か、働く時間が決められているか。こうした要素をまとめて見られます。
この判断は、この記事ではできません。 相談先は、内容によって違います。
- 働き方が雇用や派遣にあたるかどうか → まず都道府県労働局(派遣の相談は需給調整事業を担当する窓口)。社会保険労務士に相談する方法もあります
- 契約の内容そのもの → 弁護士
- この現場でどう扱うか → まず元請の担当者
「この日、来れる?」の一言の後ろに、これだけの分かれ道があります。 声をかける前に、どういう形で頼むのかを決めておくのが、いちばん安全です。
何を準備するのか
用紙は元請から渡されるのが基本です。全国建設業協会の統一様式(全建統一様式)が使われることが多いですが、独自様式の会社もあります。もらう前に自分で作らないほうが安全です。
用紙をもらったあと、手元に用意しておくものはこのあたりです。
- 自分と、注文者(自分に仕事をくれた会社)の名称
- 工事名・工事の内容・工期
- 下請契約を結んだ日
- 建設業許可の有無と、ある場合は許可番号
- 健康保険・厚生年金・雇用保険の加入状況
- 現場代理人や主任技術者など、様式で指定された担当者(要件は元請に確認)
- 契約の内容が分かる書面
- 作業員名簿など、元請から同時に求められた書類
保険の区分や、技術者の要件をこちらで判断することはできません。 分からない欄は、埋めずに元請へ確認してください。空欄で聞くほうが、間違えて書き直すより早いです。
いつ出すのか
建設業法では、再下請負を行ったあと遅滞なく通知することとされています。内容が変わったときも同じです。
ただし実務では、入場前までというように元請が期限を指定する場合があります。
- 法律上は、遅滞なく
- 実際の締切は、元請の指定を確認する
- 人・工期・担当者が変わったら、そのつど連絡する
現場が始まる前に「いつまでに出せばいいか」を聞いておくと、あとが楽です。
作業員名簿との違い
目的が違います。
- 作業員名簿:現場に入る人を把握するための書類
- 再下請負通知書:誰が工事を請け負っているのかを把握するための書類
国土交通省も、それぞれ別の様式として示しています。実務では一緒に提出を求められることが多く、元請の指定によって名簿を添付として出す形になることもあります。
よくある質問
Q. 応援を1日だけ呼んだ場合も必要ですか?
A. 日数の長さで決まる仕組みではありません。対象の工事かどうかと、その人に請け負わせたのかどうかで変わります。迷うときは元請に確認してください。
Q. 建設業の許可を持っていませんが、関係ありますか?
A. あります。許可がない事業者も、通知書に記載する対象です。 許可の有無を書く欄があります。なお、請け負う金額によっては許可が必要になる場合があるので、その線引きは元請や専門家に確認してください。
Q. 出さないとどうなりますか?
A. 元請が施工体制台帳を正しく整えられなくなり、提出や修正を求められることがあります。制度上の扱いについては、元請や許可行政庁へ確認してください。
まとめ
- 再下請負通知書は、下請がさらに下請に出したことを元請に知らせる書類(建設業法第24条の8第2項)
- 応援を呼べば必ず必要、というものではない。対象の工事で、別の事業者へ請け負わせたときの話
- 民間は下請総額5,000万円以上(建築一式8,000万円以上)、公共工事は金額にかかわらず。ただしこれは元請が結んだ総額なので、自分で判定せず元請に聞けばいい
- 一次下請から請負で受けているだけなら「載る側」。対象の工事で人に請け負わせたときは「通知する側」にもなる
- 「応援」は呼び名で、中身は別物。別の事業者への請負/自分が人を雇う/請負の形なのに相手の従業員へ自分が直接指示している、で扱いが変わる。建設業務への労働者派遣は、受け入れる側も禁止
- 他社に来てもらうこと自体は問題ではない。指示をその会社が出しているかが分かれ目。迷ったら元請や都道府県労働局へ
現場では一言で済むことが、書類になると名前がついて、様式がついて、期限がつきます。知らないと損をするというより、知らないまま慌てるのがしんどい。 そこを減らせたらと思って書きました。
トランジットでは、元請さんから渡された様式に、お聞きした内容を入力して整えるという形で、現場書類のお手伝いをしています。作業員名簿や再下請負通知書もその範囲です。
請負にあたるかどうかの判断、建設業許可の要否、主任技術者の要件の判断、官公署への提出は行いません。 埋める内容がご自身で確認できていて、手が回らないだけ、という場面でお使いください。ご相談はLINEからどうぞ。
(2026年7月時点の情報です。制度の運用や様式は変わることがあります。個別の判断は、元請の担当者や、建設業の許可行政庁、都道府県労働局、専門家へご確認ください)
(出典:建設業法(第24条の8)/建設業法施行令(第7条の4)/公共工事の入札及び契約の適正化の促進に関する法律(第15条)/労働者派遣法(第2条・第4条)/厚生労働省・建設業における労働力需給調整/国土交通省・施工体制台帳等の作成例)
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