追加工事を口頭で頼まれたら|「言った言わない」を防ぐ記録の残し方

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(2026年9月時点の法令情報です。制度は変わることがあるので、実際の判断は許可行政庁や専門家に確認してください)

17時に現場を出て、15分後に電話が鳴ったことがあります。「あそこ、やりかえてほしい」。

その日は戻りませんでした。翌朝にしてもらいました。指示が変わったことは、お互いに分かったからです。

追加ややり直しは、現場や電話で急に伝えられることがあります。だから、記録も現場で取れる形にしておく必要があります。

着手する前に、「何を・どこまで・誰の負担で・いつまでに」を文字にして送り、相手の確認を取ってください。

これは、口頭の指示が食い違うのを防ぐための実務上の確認です。 法律上の変更契約を正式に交わすこととは、別のものとして考えてください(この違いは後半で説明します)。

この記事でわかること

  • 追加・指示変更・自分の手直しの分け方
  • 着手前に残す7項目と、そのまま送れる確認文3パターン
  • 建設業法19条が定める変更の書面と、LINEでできること・できないこと

追加を頼まれたら着手前に確認する3段階。①まず分ける(契約外の追加・指示の変更・自分の手直し)②文字で返す(場所と内容と数量・費用と計算方法・工期への影響)③作業後も残す(写真・人工と材料と運搬・完了の連絡)。相手を疑うためではなく、お互いの記憶を合わせるため

まず、「何のやり直しか」を分けます

同じ「やり直し」でも、費用と工期の扱いが変わります。 記録を残す前に、ここを分けてください。

種類中身
① 当初の契約になかった追加作業頼まれていなかったものを、新しくやる
② 指示の変更によるやり直し指示どおりに施工したが、その後で指示が変わった
③ 自分の施工不良による手直し指示どおりになっていなかったので、直す

①と②は、費用と工期の確認が必要です。③は、自分の負担になるのが基本です。

現場で混ざりやすいのが②と③です。「やりかえて」と言われた瞬間は、どちらなのか分かりません。 だから確認するときは、先に「いつ、どの指示で施工したか」を並べます。 責める必要はありません。日付と内容を置くだけで、②なのか③なのかは、たいてい相手にも分かります。

この記事で扱うのは①と②です。

口頭のまま進みやすい場面

小さい追加は、作業中に出ます。 「ついでにここも」で終わる話が、いちばん記録に残りません。

大きい変更でも、口頭で来ることがあります。 しっかり会議をして図面まで確認したのに、翌日になって「あれ、追加で」と言われる。会議で決まった話と、その後に足された話が、同じ扱いになっていきます。

そして、退勤後の電話です。 現場を出たあとに、その日の作業のやり直しを頼まれることがあります。

頼む側にも、事情があります。 発注者から言われた、図面が変わった、天気で工程が動いた。誰かが悪いのではなく、口で伝わったまま、形になっていないだけのこともあります。

会社にいたときは、報告すれば済んでいました。 追加が出たら社長に伝える。請求は社長がやる。職人が請求書を書くことはありませんでした。

一人親方になると、その人がいません。 現場で受けるのも、記録を残すのも、請求するのも、全部自分です。受けた瞬間に記録しておかないと、あとで自分が困ります。

着手する前に、この7つを残します

紙でもスマホのメモでも構いません。残す中身は同じです。

  1. 日時(何月何日の何時ごろに言われたか)
  2. 指示した人(名前と会社。役職も分かれば)
  3. 場所(現場名、階、通り芯、部屋番号など)
  4. 内容(何をするのか)
  5. 数量・範囲(どこからどこまで。おおよそでも)
  6. 費用の扱いと計算方法(有償か。単価はいくらか。何を掛けるのか)
  7. 工期への影響(何日増えるか)

7つのうち、抜けやすいのは6番です。 「追加でお願いします」と言われて、金額の話をしないまま進めてしまう。気心の知れた相手なら、それで通ることもあります。 ただ、金額が大きいときや、担当者が代わったときに、話が止まります。

もうひとつ、確認しておくといいことがあります。 その人に、金額を決める権限があるかどうかです。現場の監督から作業の指示は受けても、追加金額の承認は別の担当という会社があります。 「金額の件は、どなたに確認すればよいですか」と一言聞いておくと、あとで戻されません。

そのまま送れる確認文

コピーして、日付と場所を書き換えれば使えます。 LINEでもメールでも構いません。

送るのは、相手を疑うからではありません。 聞いた内容を同じ形で返して、お互いの記憶を合わせるためです。

夕方の建設現場で、追加作業の内容をスマートフォンで一緒に確認する二人の職人

パターン1:費用の話までできている場合

お疲れさまです。
本日15時ごろにご指示いただいた追加作業について、確認させてください。

・場所:(現場名)3階西側、通り芯5〜7
・内容:(追加する作業)
・数量:約( )
・追加費用:当初見積りの( )円/(単位)を適用
・工期への影響:作業に1日を見込んでいます

この内容で着手してよろしいでしょうか。
違う点があれば、着手前に教えてください。

単価を「当初見積りの◯円」と書いておくのが大事です。 「現行どおり」だけでは、何が現行なのかが人によって変わります。

パターン2:数量がまだ確定しない場合

お疲れさまです。
本日ご指示いただいた追加作業について、確認させてください。

・場所:( )
・内容:( )
・数量:現時点では未確定のため、完了後に双方で実績数量を確認
・追加費用:( )円/(単位)×実績数量
・材料・機械・運搬費:(含む/別途)
・工期への影響:( )日を見込んでいます

有償の追加作業として、上記の計算方法で進めてよろしいでしょうか。
着手前にご確認をお願いします。

数量が決まらなくても、単価と数え方は先に決めます。 「終わってから見積りを出します」では、金額も計算方法も決まらないまま工事が終わります。

単価まで決められない場合は、金額を確認してから着手するのが基本です。 どうしても急ぐときだけ、こうします。

金額は( )日までに提示します。
有償の追加作業として扱うことを確認したうえで、
先に着手してよろしいでしょうか。

パターン3:指示が変わってやり直す場合

お疲れさまです。
本日ご指示いただいた変更作業について、確認させてください。

こちらで確認している○月○日の指示は( )で、その内容に沿って施工しています。
本日のご指示は、( )へ変更するという理解でよろしいでしょうか。

変更に伴う作業範囲は( )、工期への影響は( )日を見込んでいます。
追加費用と工期の扱いを確認してから着手したいため、
ご確認をお願いします。

「指示が間違っていた」とは書きません。 変更の前と後を、日付と内容で並べるだけです。相手を責めずに、何が変わったかを確認できます。

上の例は場所の書き方を建物の工事に寄せています。 職種によって、書く単位は変わります。ご自身の見積書で使っている単位に置き換えてください。

作業が終わったら、こちらも残します

着手前の確認だけでは足りません。最後の数量で食い違うことがあります。

  • 写真(作業前・途中・完了。日付が分かる形で)
  • 実際にかかった人工(何人が何日)
  • 材料・機械・運搬(使ったもの、運んだもの)
  • 作業日報(その日の作業内容として書いておく)
  • 完了の連絡(「本日完了しました」の一言でも、日付の記録になります)

写真は、着手前が効きます。 「どこまでが元の状態だったか」を示せるのは、着手前の写真だけです。

法律では、変更も書面で交わすことになっています

建設業法19条1項は、請負契約の当事者は、契約を結ぶときに15項目を書面に記載し、署名または記名押印をして相互に交付しなければならないと定めています。許可を持っているかどうかに関係なく、契約の当事者が対象です。

その15項目のうち、6号がこれです。

当事者の一方から設計変更又は工事着手の延期若しくは工事の全部若しくは一部の中止の申出があつた場合における工期の変更、請負代金の額の変更又は損害の負担及びそれらの額の算定方法に関する定め

追加や変更が出たときに、工期と金額をどう変えるか。その計算方法まで、最初の契約で決めておくことになっています。

追加が出てから考えるのではなく、先に決めておくものとされています。

そして19条2項です。

請負契約の当事者は、請負契約の内容で前項に掲げる事項に該当するものを変更するときは、その変更の内容を書面に記載し、署名又は記名押印をして相互に交付しなければならない。

変更するときも、書面にして、お互いに交付する。 これが法律の建て付けです。

自分だけのメモや、法令上の条件を満たしているか確認していない送信履歴だけでは、この「相互に交付」を済ませたことにはなりません。 口頭の指示の経過を残す記録と、法律上の変更契約は、分けて考えてください。

LINEやメールは、どこまで使えるか

電子でやり取りすること自体は、法律で認められています。 19条3項に、書面に代えて電子的な方法を使える、と書かれています。

ただし、条件があります。

  • あらかじめ、どういう方法を使うのかを相手に示す(ファイルの形式、電子署名の形式など)
  • 書面か電子メールなどで、相手の承諾を得る
  • 出力して書面にできること、改変されていないか確認できること、本人だと確認できること

(建設業法施行令5条の5、建設業法施行規則13条の4から13条の6。国土交通省が2025年9月30日に新しいガイドラインを出しています)

つまり、普段のLINEで一方的に確認を送っただけでは、変更契約の正式な交付を済ませたことにはなりません。

それでも、送る意味はあります。

  • いつ、誰が、何を指示したかが残ります
  • 相手から返事があれば、その内容を確認したやり取りが残ります
  • 何より、着手前に食い違いを見つけられます

記録を残すことと、契約を正式に交わすことは、別の話です。 どちらも要る、と考えてください。

【補足】資材が高騰したときのルールは、別にあります

2024年12月13日から、建設業法に20条の2という条文が入りました。資材が急に高くなったときなどのルールです。

  • 注文者は、地盤の沈下など工期や代金に影響する事象のおそれがあるとき、契約前に建設業者へ通知する
  • 建設業者は、主要な資機材の供給不足や価格の高騰、特定の工種の労務の不足や価格の高騰のおそれがあるとき、契約前に注文者へ通知する(天災など、お互いの責任とは言えない事情から起きるものが対象です)
  • 契約前に通知した建設業者は、その事象が実際に起きたときに、工期や代金の変更の協議を申し出ることができる
  • 申し出を受けた注文者は、正当な理由がある場合を除いて、誠実に協議に応じるよう努めなければならない

2つ、注意があります。

1つめ。ここでいう「建設業者」は、建設業の許可を受けた人です(建設業法2条3項)。軽微な工事だけを請けていて許可を持っていない場合、この条文の対象になりません。

2つめ。この条文が扱うのは、資材や労務の需給と価格の話です。 元請から「ここも追加で」と言われる場面は、この条文ではなく、19条と契約書の定めの話になります。

なお、契約前に通知していなくても、契約書の定めに従って変更を協議することまで禁じられるわけではありません。

よくある質問

Q. 口頭で「追加分は払う」と言われました。請求できますか?

長く付き合っている相手なら、口頭のまま通ることも普通にあります。 現場は実際、それで回っています。

気をつけたいのは、相手の担当者が代わったときと、金額が大きいときです。 担当者が代わると、口頭の話は引き継ぎ先で確認しにくくなることがあります。そのときのために、いくらを、どういう計算で出すのかだけ、文字にしておくと安心です。

金額の話になったときに示せるものがあるかどうかで、話の早さが変わります。

Q. LINEで返事をもらえば、変更の契約書は要りませんか?

要らない、とは言えません。 記事の後半で書いたとおり、電子でのやり取りを法律上の書面交付にするには条件があります。LINEの返事は、内容を確認した記録としては役に立ちます。 金額の大きい変更なら、書面での取り交わしを相手に相談してください。

Q. 金額が決まる前に、急いで着手してよいですか?

基本は、金額か計算方法を決めてからです。 どうしても急ぐ場合は、有償の追加として扱うことと、いつまでに金額を出すかだけでも先に文字にして、相手の返事をもらってください。

Q. 指示が変わってやり直した分は、追加工事になりますか?

指示が変わったから必ず請求できる、とは言えません。 当初の契約でどこまでを請けていたか、変更の内容、費用の負担について何を取り決めたかで変わります。だから、当初の指示の日付と内容を残しておくことが効きます。

Q. 自分の施工不良による手直しも、請求できますか?

自分の施工が指示どおりでなかった場合、その手直しは自分の負担になるのが基本です。 ただし、そもそも指示どおりだったのかで見方が変わります。当初の指示、施工した内容、変更の経緯を確認して、食い違うようなら、契約書を持って専門家に相談してください。

まとめ

  • 追加ややり直しは、現場や電話で急に伝えられることがあります。 記録も現場で取れる形にしておきます
  • まず①契約外の追加 ②指示の変更 ③自分の施工不良を分けます。費用の扱いが変わります
  • 着手前に7項目を残します。抜けやすいのは費用の計算方法と、その人に金額を決める権限があるか
  • 数量が決まらなくても、単価と数え方は先に決めます。 終わってから見積りでは遅いです
  • 建設業法19条は、変更するときも書面を相互に交付すると定めています。自分だけのメモは、その代わりにはなりません
  • 普段のLINEやメールは食い違いを減らす材料になりますが、それだけで正式な交付を済ませたとは限りません
  • 資材高騰の20条の2は、許可を受けた建設業者が対象で、通常の追加指示とは別の話です

現場で受けた追加を、その日のうちに文字にする。これをその都度続けるのは、正直しんどいです。

ただ、この一手間は、揉めないためというより、次も気持ちよく組むためのものです。 お金の話を後回しにしないほうが、お互いに引きずりません。現場は、気まずさを抱えたままだと、うまく回らないので。

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なお最初のご相談では、個人情報の入った書類を送らないでください。 まず、何の書類が、いつまでに必要かだけ教えてください。

出典

  • e-Gov法令検索:建設業法(昭和24年法律第100号)2条・19条・20条の2
  • e-Gov法令検索:建設業法施行令(昭和31年政令第273号)5条の5
  • e-Gov法令検索:建設業法施行規則(昭和24年建設省令第14号)13条の4・13条の5・13条の6・13条の14
  • 国土交通省:電磁的措置による建設工事の請負契約の締結に係るガイドライン(令和7年9月30日)
  • 国土交通省:建設業法令遵守ガイドライン

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