2026-07-13

一人親方のインボイス2割特例はいつまで?そのあとの「3割特例」まで、順番に整理【FP2級×元現場19年】

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(2026年〔令和8年〕7月時点の情報です。税制は改正されることがあります。また、この記事は一般的な説明です。制度や手続きは税務署へ、自分の場合にどれが当てはまるか・どれが有利かといった個別の判断は税理士へご確認ください)

「インボイスの2割特例って、いつまで使える?」「終わったら、いきなり税金が増える?」——元請さんに言われてインボイス登録をした一人親方の中には、こうした疑問を持つ方もいると思います。

机で書類を確認する、作業着姿の一人親方のイラスト

お金の話は、前提を飛ばすと余計に不安になります。なので今日は、そもそもインボイスで何が変わったのか、というところから順番に整理します。先に結論だけ言うと、あわてる必要はありません。2割特例はたしかに終わりますが、そのあとにも負担をやわらげる仕組みが用意されています。

まず全体像を図にすると、こんな流れです(このあと、順番にくわしく説明します)。

図:2割特例からの流れ(個人事業者の場合)
令和8年分(2026年分・2027年3月に申告)
2割特例 これが最後
納める消費税=受け取った消費税の 2割
令和9・10年分(2027〜2028年分)
3割特例
納める消費税=受け取った消費税の 3割(個人・届出不要)
令和11年分〜(2029年分〜)
本則課税 または 簡易課税
届出の期限や事業区分の判断あり → 税務署・税理士へ早めに相談
※2割 → 3割と、いきなりではなく段階的に移っていきます。

まず前提:インボイスで、一人親方に何が起きたのか

もともと多くの一人親方は「免税事業者」でした。原則として、2年前(基準期間)の課税売上高が1,000万円以下なら、消費税の納税義務が免除される、という立場です(ただし、届出の状況などによって例外もあります)。

ところが2023年10月に始まったインボイス制度で、流れが変わりました。元請さんが「支払った消費税」を差し引く(仕入税額控除する)には、原則として、取引先が発行した「インボイス(適格請求書)」が必要になったのです。免税事業者はインボイスを出せないため、「このままだと元請の負担が増えてしまう」という事情が生まれました。

そこで、元請さんから「インボイスの登録をしてほしい」と言われ、適格請求書発行事業者として登録し、課税事業者になった一人親方も少なくありません。登録すると、これまで納めなくてよかった消費税を納める立場になります。つまり、いきなり負担が増える。その激変をやわらげるために用意されたのが「2割特例」です。

「2割特例」とは——納める消費税を売上税額の2割に

2割特例は、インボイス制度をきっかけに免税事業者から課税事業者になった人が対象の、負担をやわらげる仕組みです。

本来は、受け取った消費税から支払った消費税を差し引いて納めます。2割特例を使うと、その計算をせずに、納める消費税を「受け取った消費税(売上にかかる消費税)の2割」にできます。事前の届出はいらず、消費税の確定申告のときに選ぶだけです。

たとえば、1年間に受け取った消費税(売上にかかる消費税)が50万円だったとします(あくまで一般的なイメージです)。2割特例を使うと、納めるのはその2割=およそ10万円。残りの8割は納めなくてよい、というイメージです。

納税額を計算するために、実際の仕入税額を一件ずつ積み上げる必要がないため、消費税の計算は簡単になります。ただし、日々の帳簿付けや領収書などの保存が不要になるわけではありません。

なお、もともと課税事業者だった人(基準期間の課税売上高が1,000万円を超える人など)は、この特例の対象ではありません。

いつまで使える?——個人は令和8年分(2026年分)が最後

2割特例が使えるのは、令和5年10月1日から令和8年9月30日までの間をふくむ課税期間です。

個人事業者の場合、課税期間は暦年(1月〜12月)です。そのため、令和8年分(2026年分)の消費税の確定申告、つまり2027年3月(原則として3月31日まで)の申告が、2割特例を使える最後の申告になります。

終わったら、いきなり増える?——「3割特例」があります

ここが一番の安心材料です。令和8年度の税制改正で、2割特例の後継として「3割特例」という仕組みが新しくつくられました。

個人事業者は、令和9年分(2027年分)と令和10年分(2028年分)の消費税について、納付税額を「受け取った消費税の3割」にできる場合があります。それぞれの申告は、原則として翌年に行います。

  • 対象:インボイス登録で免税事業者から課税事業者になった個人で、基準期間(2年前)の課税売上高が1,000万円以下の人など
  • 手続き:こちらも事前の届出は不要で、申告のときに記載するだけ
  • 注意:法人(会社)は、この3割特例の対象外です

先ほどの例(受け取った消費税50万円)でいえば、2割特例なら約10万円だった納税が、3割特例では約15万円になるイメージです。負担は「2割 → 3割」と少し増えますが、いきなり本来の計算に戻って大きく増える、というわけではありません。

年ごとの流れを、表で整理

言葉だけだと分かりにくいので、個人事業者の場合の流れを表にします。

消費税の年分西暦(申告の時期)使える特例
令和8年分2026年分(2027年3月に申告)2割特例(これが最後)
令和9年分2027年分(2028年3月に申告)3割特例
令和10年分2028年分(2029年3月に申告)3割特例
令和11年分〜2029年分〜本則課税 または 簡易課税

こうして見ると、「2割特例が終わる=すぐ本来の重い計算」ではなく、3割特例をはさんで段階的に移っていくことが分かります。

その先(令和11年分〜)——本則課税か、簡易課税か

3割特例が終わる令和11年分(2029年分)からは、本則課税で計算するか、要件を満たして期限までに届出をしたうえで「簡易課税」という計算方法を使うことになります。

簡易課税は、実際の経費を細かく集計せず、業種ごとに決められた割合(みなし仕入率)で納税額を計算する方法です。基準期間の課税売上高が5,000万円以下で、原則として事前の届出が必要です(2割・3割特例からの移行については、届出期限をやわらげる措置もあります)。期限や要件は、税務署・税理士に確認してください。

建設業のみなし仕入率は、仕事の内容で変わります。

  • 材料を自分で調達して工事する場合は、第3種(みなし仕入率70%)=納めるのは受け取った消費税のおよそ3割
  • 材料は元請から支給され、手間(労務)だけを請け負う場合は、第4種(みなし仕入率60%)=納めるのは受け取った消費税のおよそ4割

同じ一人親方でも、材料込みの工事と手間請けの両方がある場合などは、原則として取引ごとに区分を判定します。材料支給で手間だけを請け負う取引は、第4種に当たる可能性があります。自分がどの区分になるか、本則と簡易のどちらが有利か、届出をいつまでに出すべきかは、判断が難しいところです。制度や手続きは税務署へ、個別の税額計算や有利・不利の判断は税理士へ、早めに相談してください。

今、一人親方が確認しておくとよいこと

  • 自分が「インボイス登録で免税から課税になった人」なのか(2割・3割特例の対象か)
  • 令和8年分までは2割、令和9・10年分は3割で申告できること(あわてなくてよい)
  • その先の簡易課税などは、届出の期限や事業区分の判断があるので、余裕をもって税務署・税理士に相談すること

数字や制度の名前が多くて身構えてしまいますが、順番に見ていけば大丈夫です。大事なのは、締め切り前の夜に一人で抱え込まないこと。分からないところは、遠慮なく税務署や税理士に聞いてください。

まとめ

  • インボイス制度で、元請の求めに応じて課税事業者になった一人親方も少なくない。その負担をやわらげるのが2割特例
  • 2割特例は、個人は令和8年分(2026年分/2027年3月申告)が最後
  • そのあとは、令和9・10年分に「3割特例」(個人・届出不要)が使える=いきなり大きく増えるわけではない
  • 令和11年分からは本則課税か簡易課税。簡易課税は要件・事前の届出が必要で、事業区分の判断もある
  • 制度や手続きは税務署へ、個別の税額計算や有利・不利の判断は税理士へ

よくある質問

Q. 2割特例と3割特例は、届出がいりますか? どちらも事前の届出は不要です。消費税の確定申告のときに、その特例を使う旨を記載すれば大丈夫です。ただし対象になる人の条件があるので、当てはまるかどうかは確認してください。

Q. 法人(会社)でも3割特例は使えますか? いいえ。3割特例は個人事業者が対象で、法人は使えません。法人の場合の進め方は、税務署や税理士にご確認ください。

Q. 手間請け中心ですが、簡易課税だと得ですか? 仕事の内容によって事業区分(みなし仕入率)が変わり、本則課税と比べた有利・不利も人によって変わります。この記事では断定できません。届出の期限もあるので、制度や手続きは税務署へ、個別の判断は税理士へ、早めに相談してください。

Q. そもそも、インボイスの登録をやめることはできますか? 取りやめの手続き自体はあります。ただし、取りやめると、元請との取引条件に影響する可能性があります。税務上の手続きは税務署や税理士に、取引への影響は元請などの取引先に確認したうえで、やめる・続けるを判断してください。

トランジットは書類作成のお手伝いはできますが、税額の計算や有利・不利の判定といった税務の判断は行いません。税務は、税理士・税務署の領域です。


参考にした資料:

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