2026-07-13

改正建設業法で、一人親方の見積書はどう変わる?「労務費の内訳明示」をわかりやすく

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(2026年〔令和8年〕7月時点の情報です。制度の詳しい内容や個別の取扱いは、国土交通省や許可行政庁〔都道府県など〕、専門家でご確認ください。この記事は一般的な説明で、建設業許可などの官公署に出す書類は行政書士の分野です。ここでは見積書の書き方の話に絞ります)

「見積書、今までどおりの書き方でいいのかな」——2025年12月に建設業法が変わってから、そう気になっている一人親方もいると思います。

今回の改正では、見積書に「労務費」などを分けて書くことが、これまで以上に大切になりました。ただし、だれに"ルール"として関わるかは、建設業許可を持っているかどうかで変わります。そこを整理しながら、順番に見ていきます。

机で見積書を作成する、作業着姿の一人親方のイラスト

何が変わった?——見積書に「内訳」を分けて書く

2025年12月12日、改正された建設業法が全面施行されました。建設業許可を受けた建設業者について、ポイントをざっくり言うと、こうです。

  • 見積書に、必要な経費を内訳で分けて示すことが、これまで以上に明確に求められるようになった
  • 材料費・労務費・法定福利費・安全衛生経費・建退共の掛金を、通常必要と認められる額より著しく低く見積もったり、そう変更を求めたりすることが禁止された
  • 法律に基づく内訳入りの見積書を作った場合、その見積書と、その内容に関する注文者との打合せ記録を、工事目的物の引き渡しから10年間保存する

つまり許可業者には、「一式いくら」でざっくり出すのではなく、何にいくらかかるのかを見えるようにしましょう、という流れです。

なお、これらに違反したときは、受注者である建設業者には指導・監督、発注者には勧告・公表といった措置があります。

なぜ、こう変わったのか

背景には、「現場で汗をかく職人に、賃金がちゃんと届いていない」という問題があります。

工事の金額が「一式いくら」でざっくり決まると、途中の会社が値切ったときに、どこが削られたのかが見えません。しわ寄せがいきやすいのは、一番下で作業する職人の手間賃(労務費)です。国が労務単価を毎年のように上げても、それが現場まで下りてこない、という声は根強くありました。

そこで、労務費を見積の中で「見える化」し、著しく低い労務費を禁止することで、適正な賃金を現場まで届けよう、というのが今回の改正のねらいです。

見積書で「分けて書く」5つの経費

国土交通省は、見積書で分けて示す経費として、次のような項目を挙げています。

図:見積書で「分けて書く」5つの経費
① 材料費
使う材料の費用
② 労務費
現場で働く人の賃金のもと
③ 法定福利費
社会保険や労働保険の、事業主が負担する分
④ 安全衛生経費
安全に工事をするための費用(保護具・点検・教育など)
⑤ 建退共の掛金
職人の退職金の積み立て(建設業退職金共済)の掛金
※③〜⑤も「適正な施工に欠かせない経費」とされています。許可業者では、これらを著しく低く見積もることや、その依頼をすることも禁止されています。

あなたは「許可あり」?それとも「許可なし」?

ここが一番大事なところです。一人親方には、建設業許可を持っている人と、軽微な工事だけを請け負う「許可がいらない」人がいます。今回のルールは、この違いで関わり方が変わります。

  • 建設業許可を持つ一人親方:上で説明した努力義務・禁止・保存のルールが、法律として直接関わります
  • 許可がいらない範囲で働く一人親方:今回の規制は直接は適用されません。ただし国は、こうした小規模な事業者にも、許可業者と同じように適正な見積りに取り組むことを期待しています

だから「自分は許可がないから関係ない」と切り捨てるのは、もったいない話です。許可がない一人親方に今回の規制が直接かかるわけではありませんが、労務費を内訳で示すことは、「これだけの技能と手間に、これだけの金額が必要です」と説明し、適正な労務費を交渉するための材料として活用できます。

「一式」から「内訳」へ——見積のイメージ

イメージをつかむために、かんたんな例で見てみます。

これまで(一式でまとめる)は、こんな形が多かったはずです。

  • 型枠工事 一式 ◯◯円

これからは、中身を分けて示します。

  • 材料費 ◯◯円
  • 労務費 ◯◯円
  • 法定福利費 ◯◯円
  • 安全衛生経費 ◯◯円
  • 建退共の掛金 ◯◯円

「一式」という行を使うこと自体が、一律に禁止されたわけではありません。ただし、建設業許可を持つ建設業者には、必要な経費の内訳を示す努力義務があります。金額は、工事内容や現場の条件などを踏まえて親方さんが見積もるものです。ただし、許可業者が必要な額より著しく低く見積もることは禁止されています。変わるのは「中身を分けて見せる」こと。分けて書くほど、値切りの理由もはっきりしますし、どこを削ると現場が危なくなるのかも、相手に伝わりやすくなります。

見積の参考になる「労務費の基準値」

改正にあわせて、国は「労務費に関する基準」を定め、職種や地域などに応じた「労務費の基準値」を公表しています。

これは、自分の労務費を考えるときの参考になります。ただし、実際の見積額は、作業内容や現場の条件なども踏まえて決めるものです。くわしい数字は、国土交通省の「労務費に関する基準ポータルサイト」で見られます。国交省は、小規模な事業者も参考にできる見積書の様式例や、書き方ガイドも公開しています。

難しい言葉を、ひとことで

  • 法定福利費:社会保険や労働保険の、事業主が負担する分のお金
  • 安全衛生経費:安全に工事をするための費用(保護具、点検、教育など)
  • 建退共:建設業で働く人の「退職金の共済制度」。その積み立ての掛金

名前は難しいですが、どれも「安全に働いて、ちゃんと備えるためのお金」です。見積で見えるようにしておくと、あとで「聞いていない」というトラブルも減ります。

まとめ

  • 2025年12月の改正建設業法の全面施行で、許可業者が見積書に分けて示す経費(材料費・労務費・法定福利費・安全衛生経費・建退共の掛金)が、より明確になった
  • 分けて示すのは、材料費・労務費・法定福利費・安全衛生経費・建退共の掛金
  • 許可業者では、これらを著しく低く見積る・依頼するのは禁止。対象の見積書などは引き渡しから10年保存
  • 許可がいらない一人親方には直接は適用されないが、国は同様の取り組みを期待。適正な労務費を示す交渉材料に使える
  • 自分の場合の書き方や、法定福利費・建退共の扱いは、国交省の情報や許可行政庁・専門家に確認を

よくある質問

Q. 「一式いくら」の見積は、もう出したらダメですか? 「一式」という行を使うこと自体が、一律に禁止されたわけではありません。ただし、建設業許可を持つ建設業者には、必要な経費の内訳を示した見積書を作る努力義務があります。できる範囲で分けて書くほうが、これからは安心です。

Q. 一人親方でも、法定福利費や建退共の掛金を書く必要がありますか? まず、今回のルールが法律として直接かかるのは、建設業許可を持つ場合です。そのうえで、法定福利費や建退共の掛金は、加入状況や元請との分担によって計上のしかたが変わり、すべての一人親方が同じ金額・同じ方法で書くわけではありません。国土交通省の様式例を確認し、迷う場合は専門家や許可行政庁に確認してください。

Q. 見積書は、いつまで保存すればいいですか? 建設業許可を持つ建設業者が、法律に基づく内訳入りの見積書を作った場合、その見積書と、その内容に関する注文者との打合せ記録を、工事目的物の引き渡しから10年間保存します。

トランジットは、親方さんが決めた金額・工事内容をもとに、見積書への入力・整形をお手伝いできます。金額や工事内容の判断はしません。また、建設業許可などの官公署に出す書類は行政書士の分野なので、当方では扱いません。


参考にした資料:

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