2026-07-23
人工代の見積書の書き方|独立して初めて作る一人親方へ
この記事は約7分で読めます
職人として働いていた頃、見積書は社長や親方が用意するものでした。ところが独立すると、仕事内容と金額を自分で整理し、相手へ示す必要があります。
この記事では、人工(にんく)代を中心に請け負う一人親方が、初めて見積書を作るときに必要な項目と組み立て方を整理します。
この記事でわかること
- 見積書に載せる基本項目
- 人工代ベースの内訳の組み立て方
- 端数・有効期限・保存などの実務
- 単価そのものは、自分で決めるということ

見積書の用紙は自由。ただし、内訳は分けて書きます
見積書に全国共通の用紙はありません。元請さんの指定がなければ、Excelなどで作った様式を使えます。
一方、建設工事の見積書では、何にいくらかかるのかを分けて示すことが重要です。2025年12月施行の改正建設業法を受け、国土交通省も、労務費・材料費・法定福利費・建設業退職金共済制度の掛金・安全衛生経費などを内訳に分けた見積書を示しています(国土交通省・労務費等を内訳明示した見積書)。
人工仕事の見積書でも、「工事一式」とまとめるのではなく、分けられるものは行を分けて書きます。
見積書に載せる基本項目
相手の情報
- 会社名・部署名・担当者名(会社や部署宛ては「御中」、個人名には「様」)
自分の情報
- 屋号または氏名
- 住所、電話番号などの連絡先
見積の内容
- 発行日
- 見積番号(管理に使う場合)
- 工事名・現場名
- 予定工期
- 見積の有効期限
- 仕事内容・数量・単位・単価・金額
- 材料費・運搬費・諸経費など
- 税抜金額・消費税・税込総額
- 支払条件
- 追加や変更が出た場合の扱い
振込先は見積書の基本項目ではないため、通常は請求書で案内します。

人工代の内訳の組み立て方
人工仕事の見積は、基本はこの形です。
作業内容 × 人工数 × 単価 = 金額
組み立てるときのポイントは3つあります。
- 行を分ける——「型枠工事一式 ○○円」より、「建て込み ○人工」「解体 ○人工」と行が分かれている方が、先方は検討しやすくなります。「一式」は、説明しにくいものだけに絞ります
- 材料と経費は人工と分ける——材料費、運搬費、駐車場代などは、人工代に混ぜずに行を立てます。混ぜると、次の見積のときに自分でも内訳が分からなくなります
- 諸経費をどう扱うか決める——通信費や事務費など、工事ごとの行に分けにくい費用があります。人工単価に含める方法と、諸経費として別に書く方法があります。どちらにする場合も、必要な経費が見積から抜けないようにします
内訳のイメージはこの形です(金額は入れていません。構造だけ見てください)。
| 内容 | 数量 | 単位 | 単価 | 金額 |
|---|---|---|---|---|
| 型枠建て込み | 5 | 人工 | ○○ | ○○ |
| 型枠解体 | 3 | 人工 | ○○ | ○○ |
| 材料費 | 1 | 式 | — | ○○ |
| 運搬費 | 1 | 式 | — | ○○ |
| 諸経費 | 1 | 式 | — | ○○ |
| 小計(税抜) | ○○ | |||
| 消費税(10%) | ○○ | |||
| 合計(税込) | ○○ |
端数の扱いをそろえる——数量と単価から出した各行の金額は、そのまま記載します。合計額を値引きして丸める場合は、内訳が分からなくならないよう「調整額」「値引き」などの行を立てます。なお、消費税の1円未満の端数処理は別の話です。インボイスとして使う請求書では、1枚につき税率ごとに1回処理する決まりがあります(国税庁・端数計算)。
単価は、自分で決めるものです
この記事では「人工いくらが相場」とは書きません。単価は地域・職種・仕事の内容で大きく変わりますし、自分の単価を決められるのは自分だけだからです。
決めるための材料はあります。公共工事設計労務単価という、国が公共工事の予定価格を積算するために使う単価が、職種別・都道府県別に毎年公表されています。ただし、これは公共工事の積算に使う基準であり、そのまま一人親方の請負単価や手取り日当を示す数字ではありません。自分の単価を考えるための材料のひとつとして見ます。調べ方は労務単価の調べ方の記事にまとめています。
法定福利費について——従業員を雇っている事業者は、健康保険・厚生年金・雇用保険などの事業主負担分を「法定福利費」として見積書に分けて記載します(国土交通省・社会保険加入対策)。従業員を雇わず、請負で一人で働く一人親方が支払う国民健康保険や国民年金は、ここでいう事業主負担分とは別です。従業員を雇う、法人にするなど働き方が変わった場合は、加入状況に応じた確認が必要です。
書面に残すのは、関係を長持ちさせるためです
現場では、口頭で金額の相談が進むこともあります。ただ、金額、作業範囲、追加工事の扱いを見積書に残しておけば、お互いの記憶違いを防げます。
書面に残すのは、相手を疑うためではありません。話した内容を同じ形で確認し、次の現場でも無理なく付き合うためです。
2025年12月施行の改正建設業法を受け、建設工事の見積書では、労務費や材料費などを内訳に分けて示すことが、これまで以上に重視されています。また、建設業の許可を持つ業者が契約に際して見積書を取り交わした場合、国土交通省の運用方針では、当初の見積書と最終の見積書を工事の引渡しから10年間保存することが示されています(国土交通省・改正建設業法説明資料)。許可のない一人親方でも、あとから内容を確認できるよう、出した見積書は日付が分かる形で残しておくのが安全です(改正の全体像は改正建設業法の記事へ)。
体裁の実務
- Excelで作り、PDFで渡す——Excelでひな形を作っておけば、次回から複製して使えます。提出するときはPDFにすると、表示が崩れにくく、計算式も相手に見えません。前回のファイルへ上書きせず、複製して工事名・宛名・日付・金額を確認します
- 有効期限を入れる——資材や燃料の価格が動く時代です。「発行から○日」と区切っておけば、古い金額で話が進むのを防げます
- 税込・税抜を明記する——見積の段階でそろえておくと、請求書とのつながりがきれいになります(インボイスの基本は2割特例の記事へ)
よくある質問
Q. 見積書に決まった用紙はありますか?
A. ありません。元請さんの指定がなければ、この記事の基本項目を入れたExcelの様式を自作して使えます。
Q. 「一式」で書いてはだめですか?
A. だめではありません。ただ、行が分かれている方が先方は検討しやすく、追加工事の話もしやすくなります。説明しにくいものだけ「一式」に絞るのがおすすめです。
Q. 単価はいくらにすればいいですか?
A. 金額の判断やご相談には対応していません。国が公表している労務単価などを材料に、ご自身で決めてください。調べ方は労務単価の記事にまとめています。
Q. 値引きを求められたら?
A. 応じるかどうかも含めて、ご本人の判断です。応じる場合は、どの行をどう変えたかが分かる形で見積を出し直しておくと、次回の基準がぶれません。
基本項目を1枚にまとめました。保存して、作るときに使ってください。

見積書のテンプレートを無料で配布しています
この記事の形の見積書を、そのまま使えるExcelテンプレートにしました。黄色いセルに現場の数字を入れるだけで、金額・小計・消費税・合計が自動で計算されます。
単価や税率はご自身でお決めください(当方は税務の判断はしません)。「入力や整形が面倒」というときは、作成・整形の代行も承ります。
まとめ
- 見積書の用紙は自由。ただし内訳は分けて書く——これが2025年の改正後の流れでもある
- 内訳は行を分ける。人工・材料・運搬費など、分けられる費用は分けて書く
- 諸経費は、人工単価に含めるのか別に書くのかを決め、どこに含まれているか分かる形にする
- 単価は自分で決める。国の公表資料も判断材料になる
- 出した見積書は、日付が分かる形で残す
手書きの控えやメモから、提出できる見積書・請求書の形に整える作業は、うちでもお手伝いしています。金額や単価は、ご本人が決めた内容をそのまま入力します。
最初の相談では、書類の種類と希望する期限だけを教えてください。取引先名、現場名、住所、金額が入った書類は、この段階では送らないでください。サイトからのご相談はLINEまたはXのDMへ、ココナラをご利用の方はココナラ内からご連絡ください。
(参考:国土交通省・労務費等を内訳明示した見積書/国土交通省・改正建設業法説明資料/国土交通省・社会保険加入対策/国税庁・端数計算)
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