注文書と請書って何?|一人親方が現場に入る前に確認したい5つ

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(2026年9月時点の法令情報です。制度は変わることがあるので、実際の判断は許可行政庁や専門家に確認してください)

会社にいた頃、注文書や請書は、事務所で社長が扱っているのを見たことがあります。自分で受け取ったことも、請書を返したこともありません。

現場が決まると、社長が元請と電話で話して、それで動き出していました。

金額が決まる前に、工事が始まったこともあったと思います。あとになって「単価が低い」と揉めていました。当時、どの書面が交わされていたかは分かりません。その様子を見て、私は「最初にちゃんと話しておかないと、あとでこうなるんだな」と思いました。

独立すると、その社長の席に自分が座ります。 注文書を受け取るのも、請書を返すのも、自分です。

先に、この記事の結論を書きます。

  • 口頭でも、契約は成立することがあります。 ただし、建設工事の請負契約は、原則として着工前に、契約の内容を書面にして相互に交付することになっています
  • 注文書・請書方式で契約する場合は、注文書と請書を交換し、基本契約書か契約約款と組み合わせます。 注文書だけ、請書だけでは形として足りません
  • 注文書が来なくても、まず着工前の契約書面を求めます。 自分から提示することもできますが、内容に合意し、必要な書面を相互に交付するところまでが必要です

この記事でわかること

  • 注文書と請書の関係と、契約書面の代表的な3つの形
  • 書面に書く15の事項のうち、先に見る5つ
  • 注文書が来ないときに、できること
  • 「一式」と書かれていたら、何を確認するか

電話など口頭の合意でも契約が成立することがある。一方で、いくらで、どこまで、いつ払うかが記録に残らないことがある。建設業法は、契約内容を原則として着工前に書面にして相互に交付することを求めている

口頭でも契約は成立します。だから、文字で残します

まず、電話で決まった仕事も、書面がなくても契約として成立することがあります。

民法522条2項に、こう書かれています。

契約の成立には、法令に特別の定めがある場合を除き、書面の作成その他の方式を具備することを要しない。

つまり、工事内容や条件について双方の意思が合えば、口頭でも契約は成立します。問題は、口頭だけでは、何を約束したかを後から確かめにくいことです。いくらで、どこまでやって、いつ払われるのか。あとから確かめようとしても、契約書面の上に戻る場所がありません。

契約が成立するかどうかとは別に、建設業法19条1項は、建設工事の請負契約について、契約内容を書面に記載して相互に交付することを求めています。

建設工事の請負契約の当事者は、前条の趣旨に従つて、契約の締結に際して次に掲げる事項を書面に記載し、署名又は記名押印をして相互に交付しなければならない。

「当事者」なので、元請の側も、一人親方の側も対象です。 建設業の許可を持っているかどうかは関係ありません。

国土交通省の「建設業法令遵守ガイドライン」(第12版・令和8年1月)は、時期についてこう書いています。

契約書面の交付については、災害時等でやむを得ない場合を除き、原則として下請工事の着工前に行わなければならない。

同じガイドラインは、19条1項に違反する例を4つ挙げています。書面で契約しなかった場合。必要な事項を満たさない書面だった場合。元請の指示で書面の契約より先に工事に着手し、施工の途中や工事のあとで書面を交わした場合。 そして、基本契約書を交わさず、約款も付けずに、注文書と請書だけ(またはどちらか一方だけ)で契約した場合です。

3つめは、私が見た「金額が決まる前に工事が始まり、あとから単価で揉めていた」場面とも重なります。ただし、当時どの書面がいつ交わされていたかまでは分かりません。少なくとも、内容と金額が先に文字で残っていれば、あとから確認する場所はありました。

契約書面には、代表的な3つの形があります

注文書と請書は、契約書面の形のひとつです。注文書は注文する側(元請)が出し、請書は請ける側(自分)が返します。注文書・請書方式では、この2枚が往復して、はじめて1組になります。

ガイドラインが整理している代表的な形は、次の3つです。

契約書面の代表的な3つの形。A=標準下請契約約款に沿った契約書を双方で交わす。B=基本契約書に⑤〜⑮を書き、注文書と請書に①〜④を書いて交換する。C=注文書と請書のそれぞれに同じ契約約款を添付して交換する。いずれも原則として双方の署名または記名押印が必要で、一定の例外と電子契約がある

形何を交わすか
A. 契約書方式中央建設業審議会の「建設工事標準下請契約約款」か、それに準拠した契約書を、双方で交わす
B. 基本契約書+注文書・請書先に基本契約書を結び、個別の工事は注文書と請書で交わす
C. 注文書・請書+約款注文書と請書のそれぞれに、同じ内容の契約約款を添付または印刷する

BとCに共通するのは、注文書と請書だけでは終わらないことです。次の章で見る15の事項のうち、工事内容・金額・工期などは注文書と請書に書きます。支払の方法や、変更・万一のときの決めなどは、個別の注文書・請書に記載するものを除き、基本契約書か約款の側に書きます。 ガイドラインは、基本契約書も約款もなく注文書と請書だけで契約した場合を、19条1項に違反する例として挙げています。

基本契約書とは

一度結ぶと、その後の注文書と請書は、この基本契約書の上に乗ります。注文書・請書方式で基本契約書を使う場合は、注文書と請書のそれぞれに「ここに記載していない事項は基本契約書による」という内容を明記します。

だから、支払の条件や、変更のときの決めを読む場所は、基本契約書です。最初の1回だけ、時間をかけて読む価値があります。

署名・記名押印と、電子契約

原則として、注文書には注文者が、請書には請負者が、署名または記名押印します。 一定の要件(注文者が消費者でないこと、対等な関係と反復した取引実績を基本契約の締結時に相互に確認していること)を全部満たす場合には、注文書と請書への署名・記名押印を省略できる扱いもあります。

電子契約も認められています(建設業法19条3項)。ただし、相手の承諾だけでなく、国土交通省令で定める方法や技術的な要件を満たす必要があります。電子になっても、記載する15の事項は変わりません。

15の事項のうち、先に見る5つ

建設業法19条1項が「書面に記載する」としている事項は、15あります。全部を並べたうえで、一人親方が先に見る5つに印を付けます。

建設業法19条1項の15事項を4つに分けた地図。現場のこと=①工事内容③着手と完成の時期④施工しない日・時間帯(定めをするとき)。お金のこと=②請負代金の額⑤前金払・出来形払(定めをするとき)⑫完成後の支払の時期と方法。変わったとき=⑥変更・延期・中止⑦天災その他不可抗力⑧価格の変動。万一のとき=⑨第三者への損害⑩資材の提供・機械の貸与⑪検査と引渡し⑬契約不適合⑭遅延利息・違約金⑮紛争の解決。先に見るのは①②③④⑫の5つ

事項先に見る
①工事内容○
②請負代金の額○
③工事着手の時期と工事完成の時期○
④工事を施工しない日や時間帯を定めるときは、その内容○
⑤前金払や出来形部分への支払を定めるときは、その時期と方法
⑥設計変更・着手の延期・中止があったときの、工期や代金の変更、損害の負担、それらの額の算定方法
⑦天災その他不可抗力による工期の変更、損害の負担、その額の算定方法
⑧価格の変動による工事内容や代金の変更と、その算定方法
⑨第三者が損害を受けたときの賠償金の負担
⑩注文者が資材を提供したり機械を貸与したりするときは、その内容と方法
⑪完成を確認する検査の時期と方法、引渡しの時期
⑫工事完成後の請負代金の支払の時期と方法○
⑬契約内容に適合しない場合の責任や保証について定めるときは、その内容
⑭履行が遅れたときなどの遅延利息・違約金・その他の損害金
⑮契約に関する紛争の解決方法

① 工事内容——「一式」の文字だけでは分かりません

ガイドラインは、①についてこう書いています。

下請負人の責任施工範囲、施工条件等が具体的に記載されている必要があるので、○○工事一式といった曖昧な記載は避けるべきである。

「一式」の文字だけでは、作業の範囲や、材料をどちらが持つかまでは分かりません。 仕様書や図面など、範囲が分かる資料も一緒に確認します。注文書に「一式」とあって資料が付いていなければ、どこからどこまでか、材料と機械はどちらが用意するかを、請書を返す前に聞いておきます。

② 請負代金の額

金額は、税込か税抜か、単価契約なら「何にいくら」かまで見ます。見積書の内訳と食い違っていないかも、ここで照らします。見積書の書き方は、人工代の見積書の書き方にまとめています。

③ 着手と完成の時期

工期の起点と終点です。雨で止まる日を見込んでいるかは、この欄と⑦の欄を合わせて見ます。雨の日の扱いは、雨で現場が止まった日に整理しました。

④ 施工しない日・時間帯

定めをする場合に書く事項です。 週末は入らない、夜間は作業しない、といった約束があるなら、ここに書かれているかを見ます。約束したつもりなのに書かれていなければ、書いてもらってください。

⑫ 完成後の支払の時期と方法

いつ、どうやって払われるかです。「月末締め翌月末払い」のような約束は、ここか基本契約書に書かれます。支払日を過ぎたあとの確認は、元請の支払いが遅いにまとめています。

⑥⑦は「戻る場所」です

変更や中止があったとき、天災で止まったとき、どう決めるかを先に書いておく欄です。揉めたときに戻る場所になります。追加工事の残し方は追加工事を口頭で頼まれたらに、天候の話は雨の記事にあります。

請書を返す前に、この5つを見ます

請書は、「その条件で請けます」という返事です。返したあとで「そんなつもりではなかった」は、相手も困ります。

だから、返す前に上の5つを見ます。分からないところを聞くのは、契約の条件をそろえるための普通のやり取りです。 工事内容や金額を確認することは、失礼にはあたりません。

なお、請ける側が建設業法上の「建設業者」、つまり許可を受けた業者にあたる場合、注文者は契約前に内容をできる限り具体的に示し、見積りに必要な期間を設けることになっています(建設業法20条3項)。予定価格500万円未満の工事では、原則1日以上です。許可を持たない一人親方が請ける場合に、そのまま適用される規定ではありません。

注文書が来ないとき

口頭で決まって、注文書が来ない。ここからが、いちばん実務の話です。

根拠は2つあります

1つめは、ガイドラインです。下請の側から契約書面を出すことを妨げるものではない、と書かれています。そのうえで、出された書面が標準下請契約約款に基づくものか、19条1項の事項を満たしているのに、元請が取引上の立場を利用して正当な理由なく受け取りを拒む行為は、建設業法18条(対等な立場での契約)の趣旨からみて適当ではない、としています。

2つめは、フリーランス法(特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律)です。従業員を使っていない一人親方は、この法律の「特定受託事業者」にあたります。 公正取引委員会のQ&Aは、その例として「建設会社から住宅建設の業務の一部を受託する一人親方」を挙げています。ここでいう「従業員を使用」には法律上の基準があり、公正取引委員会は「1週間の所定労働時間が20時間以上で、継続して31日以上の雇用が見込まれる労働者」を雇うことと説明しています。

同法3条1項は、こう定めています。

業務委託事業者は、特定受託事業者に対し業務委託をした場合は、直ちに、(中略)特定受託事業者の給付の内容、報酬の額、支払期日その他の事項を、書面又は電磁的方法により特定受託事業者に対し明示しなければならない。

この明示の義務には、発注する側の規模の条件がありません。 発注側が従業員を使っていない事業者や、事業者として発注する個人であっても、従業員を使っていない一人親方に業務委託をする場合は、内容や金額や支払期日を文字で示すことになっています(支払期日を60日以内とする4条は、従業員を使っている発注者など「特定業務委託事業者」が対象で、これは別の話です)。明示する事項は、内容・報酬・支払期日だけではなく、当事者の名称、委託した日、給付の場所、検査をするならその完了日なども含まれます。メールやメッセージなど電磁的な方法で示された場合、書面での交付を求めることもできます。

できることは、二層で考えます

注文書が来ないときの二層。上段は、着工前に正式な契約書面を求め、自分から提示する場合も、内容への合意と必要な署名・記名押印を経て相互に交付する。下段は、見積書やメッセージに内容・金額・工期・支払日を残す補助記録。ただし、補助記録だけで建設業法19条の契約書面になるとは限らない

上の段は、着工前の正式な契約書面です。まず、元請に書面をお願いします。来なければ、自分から出すこともできます。注文書と請書の組にするか、標準下請契約約款に沿った契約書にするかです。ただし、一方的に送って終わりではありません。 内容について相手と合意し、必要な署名または記名押印をした書面を相互に交付するところまでで、19条の書面になります。

下の段は、正式な契約書面を取り交わすまでの補助記録です。 見積書に、工事内容・金額・工期・支払日を書いて出します。メールやメッセージで、内容・金額・支払日の3つを文字にして、相手の返事をもらいます。この3つは、少なくとも食い違いを防ぐために確認したい項目です。ただし、この3つだけで建設業法19条やフリーランス法3条の必要事項をすべて満たすとは限りません。 見積書や通常のメッセージは、正式な書面の代わりではなく、「何もないよりは残る」ものとして持ちます。これらの補助記録だけで、正式な契約書面を待たずに着工してよいという意味ではありません。

お願いの言い方は、これで足ります。

着工前に、注文書と請書、または契約書を取り交わせますか。工事内容・金額・工期・支払日は、こちらの見積書のとおりでよろしいでしょうか。

文字にしてくださいとお願いするのは、失礼ではありません。相手の記憶も、自分の記憶も、来月には薄くなります。

途中で変わったとき、困ったとき

契約のあとに内容が変わったときも、変更の内容を書面にして相互に交付します(建設業法19条2項)。口頭で追加を頼まれたときの残し方は、追加工事を口頭で頼まれたらにまとめました。天候で止まったときは雨で現場が止まった日、支払日を過ぎたときは元請の支払いが遅いにあります。

罰則について、ひとつだけ。19条に違反したことで、直ちに刑罰が科されるという説明ではありません。ただし、許可を受けた建設業者は、監督上の指示の対象になり得ます(建設業法28条)。この記事では、罰則よりも、約束を先に明確にして紛争を防ぐという役割を中心に見てきました。

制度や建設業法上の扱いを確認する窓口として、建設業取引適正化センターや都道府県の建設業担当課があります。フリーランス法に関することは、フリーランス・トラブル110番(厚生労働省の委託事業)があります。具体的な法的紛争や交渉は、弁護士などの専門家へ相談してください。

よくある質問

Q. 注文書に「一式」としか書いてありません。

「一式」の文字だけでは、作業範囲や、材料をどちらが持つかまでは分かりません。仕様書や図面など、範囲が分かる資料が付いているかを見ます。付いていなければ、範囲・数量・材料と機械の負担・工期を、請書を返す前に確認してください。

Q. 請書は、必ず返すものですか。

注文書・請書方式で契約する場合は、注文書と請書を交換します。ただし、契約の方法には、契約書を双方で交わす形や、一定の要件を満たす電子契約もあります。 どの形で契約するのかを、先に元請と合わせてください。

Q. LINEやメールで済ませてもいいですか。

電子的な方法での交付は、相手の承諾と、国土交通省令で定める要件を満たしたうえで認められています(建設業法19条3項)。通常のLINEやメールのやり取りが、そのまま19条の契約書面になるとは限りません。 正式な契約書面は、紙か、要件を満たした電子契約で取り交わします。メッセージは「残る」記録として持ちます。

Q. 基本契約書に判を押すとき、どこを見ればいいですか。

⑥変更や中止のときの決め、⑦天災のときの決め、⑧価格が動いたときの決め、⑫支払の時期と方法、⑭遅延利息や違約金です。 個別の注文書には書かれない事項が、ここに入っています。最初の1回だけ、時間をかけて読んでください。

Q. 建設業の許可を持っていない一人親方にも、19条は関係ありますか。

関係あります。19条1項は「建設工事の請負契約の当事者」を対象にしていて、許可の有無で分けていません。

まとめ

現場に入る前の5確認。①工事内容は「一式」だけでないか。②請負代金の額。③着手と完成の時期。④施工しない日・時間帯を定める場合は、その内容。⑤完成後の支払時期と方法。着工前に書面で確認する

  • 口頭でも、契約は成立することがあります。 ただし建設工事の請負契約は、原則として着工前に、契約内容を書面にして相互に交付します(建設業法19条1項)
  • 契約書面の代表的な形は3つ。 契約書方式か、基本契約書+注文書・請書か、注文書・請書+約款か。注文書と請書だけでは形として足りません
  • 15の事項のうち、先に見るのは①工事内容(一式だけでないか)②請負代金の額 ③着手と完成の時期 ④施工しない日・時間帯(定めがあるとき)⑫完成後の支払の時期と方法
  • 注文書が来なければ、まず着工前の契約書面を求めます。 自分から提示する場合も、内容に合意し、相互に交付するところまでが必要です。内容・金額・支払日は補助記録にも残しますが、それだけで正式な契約書面になるとは限りません
  • 請書を返す前に確認するのは、普通のやり取りです

会社にいた頃、注文書は事務所で社長が扱っているのを見ましたが、自分で受け取ったり、請書を返したりしたことはありません。独立すると、自分で内容を確認し、請書を返す立場になります。先に見るところが5つあると分かっていれば、電話で決まった現場でも、確かめる順番は同じです。

契約書類の作成や、その書類に何をどう記載するかの相談は行政書士へ。契約の法的判断や交渉、すでに争いがある場合は弁護士へご相談ください。 トランジットでは、すでに届いている注文書・請書のファイル名を整え、現場ごとに分類し、管理表へ入力するところまでお手伝いしています。(料金の目安はこちら)XのDM(@transit_40)かLINEからどうぞ。

なお最初のご相談では、個人情報の入った書類を送らないでください。 まず、何の書類が、いつまでに必要かだけ教えてください。

参考にした公式情報

  • e-Gov法令検索:建設業法(昭和24年法律第100号)2条・18条・19条・20条・28条
  • e-Gov法令検索:建設業法施行令(昭和31年政令第273号)5条の9
  • e-Gov法令検索:民法(明治29年法律第89号)522条
  • e-Gov法令検索:特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律(令和5年法律第25号)2条・3条・4条
  • 国土交通省:建設業法令遵守ガイドライン(第12版・令和8年1月)
  • 国土交通省 中央建設業審議会:建設工事標準下請契約約款
  • 公正取引委員会:フリーランス法Q&A

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