一人親方のNISAとiDeCo|先に見るのは「引き出せるかどうか」
この記事は約25分で読めます
2022年に、YouTubeや本でお金の勉強を始めました。
投資がなんとなく重要なのは、テレビやニュース、SNSなどで耳に入っていました。ただ、困ったのは聞ける相手がいなかったことです。周りの職人でNISAやiDeCoをやっている人は、私の知る限りいませんでした。
正直に書くと、私も最初は投資と投機の区別がついていませんでした。値上がりしそうなものを当てる話だと思っていました。
この記事は、当時の自分が読みたかったものです。制度の説明ではなく、一人親方が何から考えればいいのかという順番の話をします。
この記事でわかること
- 一人親方の前提が、会社員と3つ違うこと
- NISAとiDeCoの決定的な違いは「引き出せるかどうか」だということ
- 枠の大きさで選ばなくていい理由
- 2026年12月の制度改正と、2027年1月の手数料の見直し

会社員向けの説明が、そのままでは使えない
NISAやiDeCoの解説記事は、たいてい会社員を前提に書かれています。一人親方が読むと、前提が3つずれています。
1つめは、収入が波打つことです。 現場が続く月もあれば、天候や工程で減る月もあります。会社員のように毎月同じ額が入ってくる前提では組めません。
2つめは、病気やケガで休んだときの傷病手当金が、原則ないことです。 会社員が入っている健康保険には傷病手当金がありますが、国民健康保険には原則ありません。治療費の上限は高額療養費で決まっていても、止まった収入には上限がありません。この話は高額療養費の記事で詳しく書きました。
3つめは、退職金がないことです。 辞めるときに誰かがまとまったお金をくれる仕組みは、自分で作らないかぎりありません。
上の2つは「手元のお金をすぐ使える状態にしておく必要がある」という話です。3つめだけは、逆に「長い時間をかけて別に積む」話になります。この違いが、そのままNISAとiDeCoの使い分けにつながります。
決定的な違いは、引き出せるかどうか
制度の細かい比較の前に、いちばん大きな違いを先に置きます。
NISAは必要になれば売って現金にできます。iDeCoは原則60歳まで引き出せません。
税金の話より先に、ここを見てください。
| NISA | iDeCo | |
|---|---|---|
| 引き出し | 必要なときに売却できる(現金化まで数営業日) | 原則60歳まで不可 |
| 税の効き方 | 運用で出た利益が非課税 | 掛金が全額所得控除。運用益も非課税。受け取るときに課税の仕組みあり |
| 掛けるお金の下限 | 金融機関による(少額から可) | 月5,000円から・1,000円単位 |
| 金額の変更 | いつでも | 1年に1回だけ |
| 口座を持つ費用 | かからないことが多い | かかる(後述) |
| 向いている役割 | 使う時期を決めていないお金を育てる | 自分で作る退職金 |
iDeCoの「掛金が全額所得控除」は強い仕組みです。ただ、それは引き出せないことと引き換えです。
現場の仕事が減った月に、家のお金が足りなくなったとします。NISAなら売って充てることができます。iDeCoは、口座にいくら入っていても1円も出せません。原則として60歳まで待つことになります。
収入が波打つ働き方をしている人にとって、これは小さな違いではありません。
ただし、NISAは預金ではありません。 ここは先に押さえてください。
- 投資信託は、売る注文を出してから現金が口座に入るまで数営業日かかります。今日必要なお金には間に合いません
- そのとき値下がりしていれば、売った時点で損が確定します
- つまり「必要になったら現金にできる」であって、「いつでも同じ額が戻る」ではありません
すぐに必要になるお金は、NISAではなく預金で持ってください。 あとに出てくる順番で、生活防衛資金を先に置いているのはこのためです。
引き出せることと、引き出すことは、別の話です
ここは強く書いておきます。
NISAは引き出せますが、引き出すために持つものではありません。
値段が下がった場面で慌てて売ると、下がったところで損を確定させることになります。長く持ち続けて、コツコツ積み続けることを前提に考えるほうが、短期の値動きに振り回されにくくなります。 ここが崩れると、非課税の恩恵を受ける前に、下がったところで手放すことになります。
制度の作りもそうなっています。つみたて投資枠で買えるのは「長期の積立・分散投資に適した一定の投資信託」に限られていて、何でも買えるわけではありません。長く続けてもらう前提で用意された枠だということです。
ひとつ正確に書いておくと、長く持てば必ず増える、という話ではありません。 長期でも損が出ることはあります。長期・積立・分散は、確実に儲かる方法ではなく、短期の値動きで判断を誤りにくくするための考え方です。
「いつでも引き出せる」は、仕事が止まって生活が立ち行かなくなったときの、最後の手段として意味があります。相場が上がったから売る、下がったから売る、という使い方のためではありません。
この違いは、始める前にはっきりさせておいたほうがいいところです。手段があることと、その手段を使うことは別です。
枠の大きさでは選ばなくていい
「iDeCoは自営業者の枠が大きいから有利」という説明をよく見ます。数字だけを見れば、そのとおりです。
ただ、枠の大きさが選ぶ理由になるのは、その枠が埋まる人だけです。
NISAの生涯の非課税保有限度額は1,800万円です(うち成長投資枠が1,200万円)。年間で入れられるのは、つみたて投資枠120万円と成長投資枠240万円の合計360万円までです。
毎月いくら積んだら1,800万円に届くかを並べます。
| 毎月の積立額 | 年間 | 1,800万円に届くまで |
|---|---|---|
| 1万円 | 12万円 | 150年 |
| 3万円 | 36万円 | 50年 |
| 5万円 | 60万円 | 30年 |
| 10万円 | 120万円 | 15年 |
| 30万円 | 360万円 | 5年 |
※ 売らずに毎月同じ額を積んだ場合の、買った金額だけの単純計算です。運用で増えた分は枠を使いません(枠は買った金額=簿価で数えます)。また売った場合は、その簿価の分だけ翌年以降に枠が戻って、また使えます。一度使ったら永久に減ったまま、ではありません。
この表は「どうせ埋まらない」という話ではありません。自分がどこにいるかを確かめるための表です。
毎月3万円を積んでいる人なら、NISAの枠だけで50年分あります。この人が「iDeCoのほうが枠が大きい」という枠の大きさだけを理由に、引き出せない側を選ぶ意味は薄いはずです。iDeCoには所得控除など別の利点があるので、そちらは後ろで書きます。
一方で、毎月10万円を超えて積める人は、話が変わります。枠が足りるかどうかは、人によって違います。 上の表で、自分の位置を確かめてから決めてください。
なお枠は1人1つなので、夫婦それぞれが持てば世帯では3,600万円になります。さらに2027年1月からは、0〜17歳の子どもも年間60万円・限度額600万円まで使えるようになる予定です(この分は18歳になると1,800万円の枠へ自動的に移行します)。家族単位で考えるほど、枠は大きくなります。
順番で考える
ここまでを踏まえると、一人親方が考える順番はこうなります。

先にやること(この2つは同時に進めます)
- 生活防衛資金——仕事が止まっても暮らせるお金を、すぐ動かせる形で持つ
- 労災の特別加入——仕事中のケガで働けなくなったときの備え。入っていないと、労災保険からの給付は受けられません
そのあと
- NISA——使う時期を決めていないお金を育てる
- 余力があれば、iDeCo——自分で作る退職金
この2つを同時に、と書いたのには理由があります。片方は待つ必要がないからです。 生活防衛資金は貯まるまでに何か月もかかりますが、労災の特別加入は貯まるのを待たずに手続きを進められます。貯まるのを待っている間にケガをしても、入っていなければ労災保険からは給付されません。 ここに順番をつける意味はありません。なお補償が始まる日は手続きや承認の状況で変わるので、加入する団体に確認してください。
この2つが先にくる理由は、どちらも起きたら生活が止まることへの備えだからです。投資は、生活が止まらない状態を作ってから始めるほうが続きます。
生活防衛資金と一緒に、預金で分けておきたいものがもう2つあります。
1つは、これから払う税金と社会保険料です。 所得税・住民税・国民健康保険料・国民年金、消費税を納める人はその分も。手元にあっても、まだ払っていないだけで自分のお金ではありません。 近いうちに買う工具や車の代金も同じです。ここを投資に回すと、払う時期に足りなくなります。
もう1つは、金利の高い借入れです。 カードローンのように利息の高い借金があるなら、投資より返済を先に考えてください。 年3%や5%で増えるかどうかを待つより、確実に減らせる利息があります。ただし住宅ローンや事業の融資まで一律に返済が先、という話ではありません。金利を見て判断してください。
私自身は、保険を見直したあと、固定費の見直しに広がりました。格安SIMに変え、駅の近くに引っ越して、2台持っていた車を1台に減らしました。減らして苦しくなった支出はほとんどなくて、満足度がそれほど変わらないものから順に落としていきました。 そのぶん、貯蓄と投資に回る比率が上がりました。
保険の見直しについては、医療保険は要る人・要らない人の記事に書いています。
iDeCoが効く場面は「自分で作る退職金」
ここまでNISAを先に置いてきましたが、iDeCoを否定しているわけではありません。私自身、NISAとiDeCoの両方をやっています。
始めた理由は2つでした。勤めていた会社に退職金がなかったことと、いずれ自営でやると決めていたことです。辞めるときにまとまったお金が出る仕組みが自分にはないので、自分で作るしかない、と考えました。掛金が所得控除になることも理由の一つでした。
つまり私にとってiDeCoは、NISAと同じ役割の道具ではありません。引き出せないという性質を、そのまま退職金づくりに使っているという位置づけです。
「60歳まで引き出せない」は、目的によっては欠点ではなくなります。老後まで手をつけないと決めたお金なら、むしろ引き出せないほうが確実です。
ただし前提があります。掛金の所得控除が効くのは、課税される所得がある範囲です。 赤字の年や、仕事が大きく減った年は、その前提が崩れます。所得があっても、ほかの控除で税金がかからない状態なら、そこから先は効きません。会社員向けの記事がこの点をあまり書かないのは、給与があることが当たり前だからです。一人親方には当たり前ではありません。
差し押さえられない、という性質があります
事業をやっている人にとって、もうひとつ効く性質があります。
iDeCoで給付を受ける権利は、差し押さえることができません。 確定拠出年金法では、譲り渡すことも、担保に入れることも、差し押さえることも禁止されています(同法32条1項。個人型年金にも73条で準用されます)。
仕事が行き詰まったときでも、老後のために積んだ分はそのまま残るということです。一人で請け負って仕事をしている人にとっては、小さくない安心材料だと思います。
ただし、条文には続きがあります。
ただし、老齢給付金及び死亡一時金を受ける権利を国税滞納処分(その例による処分を含む。)により差し押さえる場合は、この限りでない。
例外にあたるのは、老齢給付金と死亡一時金を受ける権利を、国税滞納処分などで差し押さえる場合です。「iDeCoは何があっても守られる」と書いてある記事も見かけますが、条文にはこの例外が置かれています。
手数料は、掛金が小さいほど比率が重くなる
iDeCoには口座を持つための手数料がかかります。ここはNISAと大きく違うところです。
| 手数料 | 金額 | 支払先・タイミング |
|---|---|---|
| 新規加入時等手数料 | 2,829円 | 国民年金基金連合会・初回のみ |
| 加入中の手数料 | 105円(掛金拠出時) | 国民年金基金連合会 |
| 加入中の手数料(2027年1月の掛金引落しから) | 120円(月額) | 同上 |
| 事務委託先金融機関の手数料 | 金融機関により異なる | 毎月 |
| 運営管理機関の手数料 | 金融機関により異なる(無料のところもあります) | 毎月 |
下2つは金額を書きません。iDeCo公式でも「事務委託先金融機関により異なりますので、運営管理機関にお問い合わせください」となっているためです。申し込む前に、その金融機関の手数料を必ず見てください。
大事なのは、この手数料が掛金の大小に関係なくかかることです。掛金を小さくするほど、掛金に対する手数料の比率は重くなります。
私はいま、掛金を月5,000円にしています。これは制度上の下限です。口座と所得控除を残しながら、掛金の負担を軽くしている状態です。ただしこの形にすると手数料の比率はいちばん重くなるので、所得控除でどれだけ戻るかと見比べる必要があります。効き方は人によって違うので、自分の数字で確かめてください。
なお、掛金の額を変えられるのは1年(12月〜翌年11月)に1回だけです。思い立ってすぐには動かせません。拠出そのものはいつでも止められますが、止めても口座は残り、口座を維持する費用はかかり続けます。
2026年12月と2027年1月に、2つ変わります
iDeCoの枠が広がります(2026年12月1日施行)
厚生労働省の資料によると、2026年12月1日から拠出限度額が引き上げられます。
| 区分 | 現行 | 2026年12月1日から |
|---|---|---|
| 第1号加入者(自営業者・フリーランス) | iDeCoと国民年金基金等の合計で月6.8万円 | 合計で月7.5万円 |
| 第2号加入者・企業年金なし(会社員) | iDeCoで月2.3万円 | iDeCoで月6.2万円 |
| 第2号加入者・企業年金あり | iDeCoは月2.0万円まで。ただし企業型DCの事業主掛金やDB等と合わせて月5.5万円以内 | iDeCoと企業年金等の合計で月6.2万円 |
| 第3号加入者(扶養されている配偶者) | 月2.3万円 | 月2.3万円(据え置き) |
あわせて、60歳以上70歳未満でiDeCoを続ける人の区分が新しく設けられます。
企業年金がある会社員の行は、読み方に注意が必要です。 現行の2.0万円はiDeCo単独の上限で、これとは別に「企業型DCの事業主掛金・DB等・iDeCoの合計が月5.5万円以内」という縛りもかかります。iDeCoの2.0万円が企業年金の枠に上乗せされる、という意味ではありません。 改正後の6.2万円は企業年金等と合わせた共通の枠です。改正後にiDeCoへ回せるのは、6.2万円から会社が出している掛金などを差し引いた残りになります。誰でも6.2万円をiDeCoに入れられるという意味ではありません。
ここで注意したいのは、第1号(自営業者)の枠は0.7万円しか増えないのに、企業年金のない会社員の枠は3.9万円増えることです。いま「自営業者はiDeCoの枠が大きい」と説明されているのは月6.8万円と月2.3万円の比較で、その差は12月から縮まります。枠の大きさを理由にiDeCoを選ぼうとしていた人は、その理由が弱くなると考えておいてください。
なお第1号の枠は、改正後もiDeCoと国民年金基金等の合計です。iDeCo単独で7.5万円ではありません。国民年金の付加保険料を納めている人は、その分も同じ枠の中に入ります。
iDeCoの手数料が変わります(2027年1月の掛金引落しから)
国民年金基金連合会の案内によると、加入中の手数料が105円から120円になります。
見落としやすいのは、金額よりも数え方が変わることです。これまでは掛金を拠出したときに105円でしたが、新しい手数料は月額120円です。案内には、年単位拠出を選んでいる人には「加入中の手数料(120円/月)に拠出期間の月数を乗じて得た額を適用します」と書かれています。
つまり、年1回まとめて拠出して手数料を抑える、というやり方は使えなくなります。 新規加入時の2,829円に変更はありません。
この2つは、たしかに大きな変更です。ただ、慌てて始めるかどうかは、制度が変わったかどうかではなく、自分が上の順番のどこにいるかで決まります。 生活防衛資金と労災の特別加入がまだなら、その順番が改正で変わることはありません。
続け方は、3冊の本で身につけました
制度の話はここまでです。最後に、続け方の話を書きます。
聞ける相手がいなかったぶん、本を読みました。繰り返し読んだのは次の3冊です。以下は、私が読んで残ったことです。
『JUST KEEP BUYING』(ニック・マジューリ)
書名がそのまま結論です。ただ買い続けることが富を築く、という本でした。
- ほとんどの市場は、ほとんどの期間、上昇している
- だから早く買って、ゆっくり売るのが資産を増やすセオリーになる
- 底値を待って現金を貯めるのは意味がない。できるだけ早く、頻繁に投資したほうがいい
- 収入を増やし、収益を生み出す資産に投資し続ける
- 暴落は買いのチャンス
- 個別株は買うべきではない
- 時間ほど重要な資産はない
ここは補っておきます。「現金を貯めるのは意味がない」というのは、投資に回すと決めたお金の話です。 生活防衛資金や、税金・社会保険料のように近く払うお金まで投資に回す、という意味ではありません。「暴落は買いのチャンス」も同じで、生活費を削って買い足す話ではありません。 前に書いた順番のとおり、先に分けるものを分けたうえでの話です。
100年以上の膨大なデータで検証していて、インデックス投資がいかに大事かを教えてくれた本です。貯蓄編と投資編に分かれているので、若い人にはとくにすすめられると思います。
読んでから、値動きを見て手を止めることがなくなりました。10年後、20年後から見たら、今日はきっと安い、と思えるようになったからです。
「時間が効く」を数字で見ておきます
10年後、20年後と言われても、ぴんときません。毎月3万円・5万円・10万円を積み立てた場合に、年3%・5%・7%で増えたとしたらどうなるかを並べます。

| 毎月 | 年数 | 積んだ元本 | 年3% | 年5% | 年7% |
|---|---|---|---|---|---|
| 3万円 | 10年 | 360万円 | 約419万円 | 約466万円 | 約519万円 |
| 20年 | 720万円 | 約985万円 | 約1,233万円 | 約1,563万円 | |
| 30年 | 1,080万円 | 約1,748万円 | 約2,497万円 | 約3,660万円 | |
| 5万円 | 10年 | 600万円 | 約699万円 | 約776万円 | 約865万円 |
| 20年 | 1,200万円 | 約1,642万円 | 約2,055万円 | 約2,605万円 | |
| 30年 | 1,800万円 | 約2,914万円 | 約4,161万円 | 約6,100万円 | |
| 10万円 | 10年 | 1,200万円 | 約1,397万円 | 約1,553万円 | 約1,731万円 |
| 20年 | 2,400万円 | 約3,283万円 | 約4,110万円 | 約5,209万円 | |
| 30年 | 3,600万円 | 約5,827万円 | 約8,323万円 | 約1億2,200万円 |
※ 毎月末に同じ額を積み立て、年率を12で割った月複利で計算し、1万円単位で四捨五入しています。税金や手数料は考えていません。
この表から読み取れることを3つ書きます。
1つめ。期間が長くなるほど、利回りの差が大きく出ます。 10年の時点でも差はあります。毎月3万円なら年3%と年7%で約100万円、毎月10万円なら約334万円の開きです。それが20年、30年と進むにつれて広がっていきます。毎月3万円・年5%なら、30年で積んだ元本1,080万円に対して増えた分がおよそ1,417万円になり、元本より増えた分のほうが大きくなります。
2つめ。この表の中で比べると、利回りより積む額のほうが結果を動かしています。 毎月3万円を年7%で30年まわして約3,660万円。毎月10万円なら、年3%でも約5,827万円です。もちろん積む額を3倍以上にした比較なので、いつでも積立額のほうが効くという意味ではありません。
ここで言いたいのは、高い利回りを狙わなくてもいいということです。利回りは自分では決められません。積む額のほうは、家族の状況や仕事の波によって幅はありますが、自分で調整できる部分があります。「収入を増やし、収益を生み出す資産に投資し続ける」というのは、こういうことだと思います。
3つめ。表の下のほうは、NISAの枠を超えます。 毎月10万円を売らずに積み続けると、元本だけで30年で3,600万円になり、生涯の1,800万円は15年で使い切る計算です。ここまで積める人は、iDeCoや課税口座も一緒に考える話になります。
ここは誤解しないでください。この表は「こうなります」という約束ではありません。 年3%も5%も7%も、毎年きっちりその通りに増えると仮定して計算しただけの数字です。実際の値動きは年によって変わりますし、長く持ってもマイナスになることはあります。
この計算から言えるのは、毎月同じ額を積み続ける期間が長いほど、積んだ元本と、運用で増える部分の両方が大きくなるということです。30年は10年より元本自体が3倍になりますし、先に積んだ分ほど長くまわることになります。
この表を見て、積立額を無理に増やす、という話ではありません。
生活防衛資金と、税金や社会保険料など近く払うお金を先に分けたうえで、仕事が少ない月でも続けられる額で考えてください。金額を大きくして途中でやめてしまうより、小さくても続くほうが、この表の形に近づきます。
私が年40万円の制度だった頃に低い額から始めたのも、結果的にはここが効きました。大きく始めなかったから、続いたのだと思っています。
自分の金額で試すなら、金融庁の「つみたてシミュレーター」が使えます。毎月の積立額・想定利回り・積立期間の3つを入れるだけです。
『サイコロジー・オブ・マネー』(モーガン・ハウセル)
こちらは数字ではなく、持ちようの本です。
- 足るを知ること
- 未来に楽観的であれ
- お金が人生にもたらす最大の価値は自由
- 人生を自分でコントロールしているという感覚が、人間に幸福感をもたらす
- 自分の時間をコントロールするために、お金を貯め、使う
- 誤りの余地を、何よりも大切にする
- 貯蓄率を高め、身の丈に合った生活をする
独立してからのほうが、この本の意味がわかるようになりました。お金を貯めるのは、自分の時間を自分で決めるためだ、という一点がいちばん残っています。
『父が娘に伝える自由に生きるための30の投資の教え』(ジェイエル・コリンズ)
書名のとおり、自由に生きるためのお金の考え方が30の教えとしてまとめられた本です。
残ったのは、この2つでした。
- 市場を出し抜こうとするな。相場のタイミングを計るな
- 低コストで、広く分散されたインデックスファンド1本で足りる
結論そのものは、とても単純です。個別株を選ぶことも、売り買いの時期を読むこともしなくていい、というのがこの本の答えでした。
私にとっていちばん役に立ったのは、4%ルールのところでした。資産の何%までなら取り崩し続けられるか、という話です。株式と債券をどの割合で持った場合に、3%・4%・5%・6%・7%でどうなるかまで出ているので、積むだけでなく、使う側の目安まで数字で持てるようになりました。
始める前に知っておきたいこと
順番を飛ばして動くと、あとで困ることがあります。3つだけ書きます。
iDeCoは、始めたら簡単には戻せません。 途中で解約して現金にすることは、原則できません。掛金を止めることはできますが、口座は残り、費用もかかり続けます。
投資したお金は、増えることも減ることもあります。 NISAもiDeCoも、非課税になるのは利益が出た場合の話です。損が出ることもあります。
制度と商品は別の話です。 NISAもiDeCoも「税金の扱いを決めた入れ物」であって、中身に何を入れるかは自分で選びます。入れ物を作っただけでは何も始まりません。
よくある質問
Q. 仕事が減って赤字になりそうな年も、iDeCoは続けたほうがいいですか?
掛金の所得控除が効くのは、課税される所得がある範囲です。所得がない年はもちろん、所得があっても、ほかの控除ですでに税金がかからない状態なら、そこから先の効果はありません。掛金を減らすか止めるかは選べますが、金額の変更は1年に1回だけです。見通しが立つ時期に考えておくほうが動きやすくなります。判断に迷うときは税理士に相談してください。
Q. 国民年金基金とiDeCoは、両方できますか?
両方に入ること自体はできます。ただし第1号加入者の枠はiDeCoと国民年金基金等の合計なので、どちらかを増やせばもう一方に使える額は減ります。国民年金の付加保険料を納めている場合も同じ枠の中で扱われます。金額は国民年金基金連合会や加入先に確認してください。
Q. NISAとiDeCo、両方やってもいいですか?
制度上は問題ありません。私も両方やっています。ただ、同時に始める必要はありません。 引き出せるお金が足りているかを先に確かめて、余力があるならiDeCoを足す、という順番のほうが行き詰まりにくいはずです。
Q. 夫婦それぞれでNISAをやれますか? 子どもの分はどうですか?
NISA口座は1人1口座で、それぞれが枠を持ちます。18歳以上であれば夫婦それぞれで開設できるので、世帯で見れば1,800万円の2人分になります。
子どもの分は、いま(2026年8月時点)は18歳未満が使えるNISAはありません。ジュニアNISAは2023年末で新規の投資が終わっています。
ただし2027年1月から変わる予定です。 つみたて投資枠の年齢要件が撤廃され、0〜17歳は年間60万円・非課税保有限度額600万円で使えるようになります。18歳になると、そのまま1,800万円の枠へ自動的に移行します。払い出しには条件がついていて、12歳以降であること、資金の使いみちが子どものためであること、そして子どもが同意したことを示す書面とともに、親権者が申出書を金融機関に出すことが示されています。親が自由に引き出せる口座ではありません。
世帯で足していくと、枠はさらに大きくなります。自分の家でその枠が埋まるのかどうかは、上の年数表で確かめてください。
Q. iDeCoは60歳になれば必ず受け取れますか?
いいえ。受け取れる年齢は、加入していた期間で変わります。 確定拠出年金法では、60歳から受け取るには「通算加入者等期間」が10年以上必要です。それに満たない場合は、8年以上で61歳から、6年以上で62歳から、4年以上で63歳から、2年以上で64歳から、1か月以上で65歳から、というように後ろへずれます。
つまり、60歳の時点で通算加入者等期間が10年に満たなければ、60歳では受け取れません。 なおこの期間には、iDeCoだけでなく企業型の確定拠出年金にいた期間なども合算されます。前の勤め先で企業型に入っていた人は、自分で思っているより長いことがあります。
このほか、一定の障害の状態になったときや亡くなったときの給付は別に定められています。「原則60歳まで」と書いているのは、こうした違いがあるためです。
Q. 何を買えばいいですか?
特定の商品名を挙げることはしません。ただ、それだけだと答えになっていないと思うので、読んだ本の結論を書いておきます。
低コストで、広く分散されたインデックスファンド1本で足りる。 個別株を選んだり、相場のタイミングを計ったりする必要はない、という考え方です。上で紹介した本は、ここに行き着いていました。私も、この結論に同意しています。
「広く分散された」は落とせない条件です。インデックスファンドといっても、一つの国だけ、一つの業種だけ、といった狭い範囲のものもあります。 低コストでありさえすれば何でも同じ、という話ではありません。
もう一つ。「1本で足りる」は「安全な1本がある」という意味ではありません。 広く分散されていても、株式が中心なら大きく下がる年はあります。元本は保証されませんし、近いうちに使う予定のあるお金には向きません。
Q. 開業前でも始められますか?
NISAは18歳以上であれば開設できます。iDeCoは国民年金の被保険者であることなど加入資格の条件があるので、いまの自分がどの区分に当たるかを確認してください。区分によって上限額も変わります。
まとめ
- 一人親方は、会社員と前提が3つ違います。収入が波打つ/傷病手当金が原則ない/退職金がない
- NISAとiDeCoの決定的な違いは引き出せるかどうかです。税の得より先に、ここを見てください
- ただしNISAは預金ではありません。現金になるまで数営業日かかり、値下がり中に売れば損が確定します。 すぐ必要になるお金は預金で持ってください
- 引き出せることと、引き出すことは別です。長く持ち続けて積み続けることを前提に考えるほうが、短期の値動きに振り回されにくくなります。ただし長期でも損が出ることはあります
- 枠の大きさは、選ぶ理由になるとはかぎりません。 自分の積立額で枠が埋まるのかを先に確かめてください
- 順番は、生活防衛資金と労災の特別加入(この2つは同時に)→ NISA → 余力があればiDeCo
- 税金・社会保険料など近く払うお金は、預金で分けておきます。 手元にあっても自分のお金ではありません。金利の高い借入れがあるなら、返済のほうが先です
- iDeCoは「引き出せない」性質を自分で作る退職金に使う道具です。所得控除が効くのは、課税される所得がある範囲です
- iDeCoの給付を受ける権利は差し押さえられません(確定拠出年金法32条1項)。ただし老齢給付金と死亡一時金を受ける権利を国税滞納処分などで差し押さえる場合は例外です
- 受け取れる年齢は加入期間で変わります。60歳から受け取るには通算10年以上が必要です
- iDeCoには口座の費用がかかります。掛金が小さいほど、比率は重くなります
- 2026年12月1日から拠出限度額が上がり、2027年1月の掛金引落しから手数料が105円(拠出時)から120円(月額)になります
制度の判定や個別の金額は、加入先や税理士に確認してください。書類まわりで手が止まっているところは、トランジットでお手伝いできます。
出典
- 金融庁:NISAを知る(NISA特設ウェブサイト)
- 金融庁:つみたてシミュレーター
- 金融庁:「令和8(2026)年度税制改正について-税制改正大綱における金融庁関係の主要項目-」(2025年12月。つみたて投資枠の対象年齢見直し)
- 厚生労働省:確定拠出年金の拠出限度額(資料「DC拠出限度額(令和8(2026)年12月~)」)
- 厚生労働省:2025年の制度改正
- e-Gov法令検索:確定拠出年金法(平成13年法律第88号)32条・33条・73条
- 国民年金基金連合会:iDeCo公式サイト(加入資格・掛金・手数料)
- 国民年金基金連合会:「iDeCo加入者に係る手数料を見直します」(令和9年1月の掛金引落しから適用)
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