この書類、誰に頼めばいい?|税理士・行政書士・社労士と、事務代行の分かれ目
この記事は約14分で読めます
(2026年8月時点の法令情報です。制度は変わることがあるので、実際に依頼するときは各資格者や窓口に確認してください)
会社にいた頃、社長は3人の専門家に頼んでいました。建設業の許可は行政書士、確定申告は税理士、社会保険と雇用保険は社会保険労務士。
現場にいる職人の立場でも、誰が何を担当しているかは見えていました。独立すると、その3人がいなくなります。 誰に何を頼むのかも、自分で決めることになります。
この記事でわかること
- 手元の書類から、税理士・行政書士・社労士・事務代行のどこに出すかを引く見方
- 資格がないとできないことと、頼んでよいことの線
- トランジットが引き受けられる範囲

先に答えを置きます
手元の書類から引いてください。
| 手元の書類・困りごと | まず相談する相手 |
|---|---|
| 確定申告、税額、経費になるかの判断 | 税理士 |
| 建設業の許可、経営事項審査 | 行政書士 |
| 一人親方の労災への特別加入、日額の変更 | 承認を受けた特別加入団体 |
| 雇用保険、社会保険などの手続き | 社会保険労務士・各窓口 |
| 支払われない代金、契約上の争い | 弁護士 |
| 元請に出す現場書類、見積書・請求書への入力 | 事務代行に頼める場合があります |

ただし、書類の名前だけでは決まりません。
同じ書類でも、本人が決めた内容を入力してもらうのか、中身そのものを判断して作ってもらうのかで、頼める相手が変わります。
見るのは、この3つです。
- どこに出す書類か
- 何が書かれているか(契約や事実を証明するものか)
- 何を頼むのか(入力までか、中身を決めるところからか)
この先では、具体例で3つの見分け方を示してから、資格ごとの線を法律で確認していきます。
手元の3つで考えてみます
例1:見積書
工事名も金額も支払条件も自分で決めていて、それを様式に入力して整えるだけなら、事務の作業です。
どの金額にするか、消費税をどう扱うか、契約条件をどう決めるか。 ここまで人に任せると、入力ではなくなります。
例2:作業員名簿
本人や元請から示された氏名・資格・保険の情報を、指定の様式に入力するのは事務の作業です。
社会保険の加入区分がどれに当たるかを判断するのは別の話で、これは年金事務所や社労士に確認する部分です。
例3:建設業の許可
許可の申請書を、本人に代わって中身から作る仕事は行政書士の領域です。 自分で申請するのは問題ありません。
そもそも許可が要らない場合もあります。金額の線は、この記事の後半に早見欄としてまとめました。
3つに共通しているのは、書類の名前ではなく、頼む作業で分かれていることです。ここから、資格ごとに線を見ていきます。
税理士——税金の判断を頼めるのが、大きな違いです
先に結論です。領収書を日付順に並べる、売上を会計ソフトに入力する。こうした整理と記帳は、事務代行にも頼めます。
一方で、この支出は経費になるのか、この売上はいつの年に入るのか、消費税をどう扱うのか。 こうした税金の判断を頼める相手は、税理士です。
法律ではこうなっています
税理士法2条1項が「税理士業務」としているのは3つです。
- 税務代理——税務署などへの申告や申請、主張を、本人に代わってすること
- 税務書類の作成——税務署などに出す申告書や申請書を作ること
- 税務相談——税額のもとになる計算について、相談に応じること
52条で、税理士でない人がこの3つを行うことを禁じています。
税理士又は税理士法人でない者は、この法律に別段の定めがある場合を除くほか、税理士業務を行つてはならない。
記帳の代行は、この3つに入っていません。 2条2項に別に書かれていて、国税庁はこれらを「会計事務」と呼び、税理士業務と区別して説明しています。
職人の間で出るのは、たいてい「税理士に頼んでいる」という話です。頼んでいない人は、自分でやるか、家族がやっているか。帳簿の入力と整理だけを外に出す、という選択肢は、あまり知られていないように思います。
「作成する」の意味が決められています
2つめの「税務書類の作成」について、国税庁はこう説明しています。
「作成する」とは、申告書等を自己の判断に基づいて作成することをいい、単なる代書は含まれないこととされています
自分の判断で中身を決めて作るのか、決まっている内容を書き写すのか。 ここに線が引かれています。
ただし、これは税理士法についての説明です。 ほかの法律にも同じ線がそのまま当てはまる、とは考えないでください。「作成」や「代理」が何を指すかは、法律ごとに違います。
もう1つ。税理士法の「業とする」は、必ずしも有料の場合だけを指しません。 無料でも、税務書類を自分の判断で作ることを繰り返す場合などは注意が必要です。
行政書士——役所に出すものだけではありません
ここがいちばん誤解されやすいところです。
行政書士の対象は、官公署に出す書類だけではありません。 契約に関する書類や、事実を証明する書類も入ります。
法律ではこうなっています
行政書士法1条の3は、対象を3つ挙げています。
行政書士は、他人の依頼を受け報酬を得て、官公署に提出する書類(中略)その他権利義務又は事実証明に関する書類(実地調査に基づく図面類を含む。)を作成することを業とする。
日本行政書士会連合会は、権利義務に関する書類の例として請負契約書などの各種契約書を、事実証明に関する書類の例として会計帳簿や財務諸表を挙げています。
つまり、提出先が民間の相手だから対象外、とは言えません。 中身で見られます。そして19条で、行政書士でない人が報酬をもらってこれを仕事として行うことを禁じていて、違反した場合の罰則も設けられています。
2026年1月の改正で、19条の趣旨がはっきりしました。 条文に「いかなる名目によるかを問わず」という言葉が入り、会費・手数料・コンサルタント料といった別の名前を付けても、書類を作る対価であれば報酬にあたることが明確になりました。日本行政書士会連合会は、これは新しく禁じたものではなく、これまでの法律でも変わらないと説明しています。
だから「入力だけ」という名前では決まりません
「入力だけ」「書き写すだけ」と呼べば必ず対象の外になる、というものではありません。 作業の名前ではなく、書類の中身と、実際に何をするのかで見られます。
トランジットがお受けする範囲
ご本人や元請が決めた内容の、入力と整形です。税額・契約条件・許可申請・社会保険の加入区分といった判断はしません。線引きが分からない書類は、お受けする前にこちらで資格者に確認します。
社会保険労務士——労災も、ここに入ります
「人を雇っていないから関係ない」ではありません。一人親方にも入り口があります。労災の特別加入です。
加入の窓口は、特別加入団体です
一人親方が労災に入れる根拠は労災保険法33条3号、「労働者を使用しないで行うことを常態とする者」です。そして35条で、その人たちの団体が申請して国の承認を受ける形が決められています。
加入の申込みも日額の変更も、窓口は承認を受けた特別加入団体です。 これが法律の決めた形なので、団体に頼むぶんには何の問題もありません。
団体を通さずに、外の人へ有料で労災保険の申請書の作成や提出を頼む場合は、社労士に相談してください。 労災保険法に基づく手続きだからです。団体の事務を社労士が支えていることもあります。
社労士法2条1項のうち、27条が資格のない人に制限しているのは1号から2号まで(申請書等の作成、その提出手続、法令に基づく帳簿書類の作成)で、対象の法律は別表第一に並んでいます。労働基準法・労災保険法・雇用保険法などです。
特別加入そのものの考え方は、保険・年金の順番の記事に書きました。
人を雇うときは、先に確認してください
従業員を入れたり、家族に給料を払う形にしたりすると、働き方や人数によって、労災保険・雇用保険・社会保険の手続きが必要になる場合があります。 全部が一律に発生するわけではありません。
とくに同居している家族は、一般の従業員と同じ扱いになるとは限りません。 雇用保険では、同居の親族は原則として対象外とされていて、一定の条件を満たす場合に限って対象になります。
人を入れる前に、年金事務所・ハローワーク・社労士に確認してください。
弁護士——もめたとき
弁護士法72条は、弁護士でない人が報酬を得る目的で、法律事件について代理や和解などを業として行うことを禁じています。
一人親方が弁護士に相談する場面のひとつが、工事代金が支払われないときです。工事は終わったのに払われない、勝手に減らされた、元請が飛んだ。
ただ、いきなり弁護士に行く前に立ち寄る窓口があります。支払いが遅れたときの相談先は、元請の支払いが遅い記事に分けて書きました。
ここだけ確認|建設業の許可が要らない工事
許可の話をする前に、そもそも自分に許可が要るのかを確かめてください。建設業法3条1項のただし書きで、軽微な工事だけを請ける人は許可が要らないとされていて、その中身が施行令1条の2で決まっています。
| 工事の種類 | 許可が要らない範囲 |
|---|---|
| 建築一式工事以外 | 1件の請負代金が500万円未満 |
| 建築一式工事 | 1件の請負代金が1,500万円未満、または延べ面積150平方メートル未満の木造住宅 |
多くの一人親方は、上の行にあたります。
数え方に、注意が3つあります。
- 消費税を含めた額で見ます(国土交通省の資料でも税込みとされています)
- 同じ工事を2つ以上の契約に分けても、合計で見ます(正当な理由があって分けた場合は別です)
- 注文者に材料を出してもらったら、その市場価格を足します(運んでもらったなら運送賃も)
3つめは効きます。手間だけで400万円でも、支給された材料が200万円分あれば、600万円として数えることになります。
なお下の行の「木造住宅」には条件があって、国土交通省の説明では建物の主な構造が木造で、延べ面積の2分の1以上を住まいとして使うものとされています(店舗との併用住宅も、住まいの部分が半分以上なら入ります)。
判断に迷うときは、許可行政庁(都道府県の建設業担当課)か行政書士に聞くのがいちばん早いです。
会社が許可を取るとき、社長と事務の人が過去の契約書や請求書を集めていました。横で見ていて、大変そうだと思ったのを覚えています。
トランジットがやること・やらないこと
先に、やらないことを書きます。
| 内容 | 頼む先 | |
|---|---|---|
| お受けしません | 建設業の許可、経営事項審査など、官公署に提出する書類 | 行政書士 |
| お受けしません | 確定申告、税額の計算、経費になるかどうかの判断 | 税理士 |
| お受けしません | 労災の特別加入や給付の請求、社会保険・雇用保険の手続き | 加入する団体、社会保険労務士 |
| お受けしません | 支払われない代金の請求、示談の代理 | 弁護士 |
お受けするのは、入力と整形です。中身を決めるのはご本人です。
| お受けする作業 | 線引き |
|---|---|
| 現場書類の入力・整形 | ご本人や元請が決めた内容を入力します。加入区分や法律上の判断はしません |
| 見積書・請求書の入力・整形 | 金額・工事内容・支払条件は、ご本人が決めます |
| グリーンサイトへの入力補助 | ご本人や元請から示された情報を入力します。社会保険の加入区分は判断しません |
| 領収書・売上メモの整理と入力 | 経費になるか、どの年の売上かといった税務の判断はしません |
線を引いておく理由は単純です。できないことを引き受けると、いちばん困るのは頼んだ側だからです。
判断が必要なところは、それができる人に渡す。手を動かすところは、こちらで引き受ける。この形がいちばん早いと思っています。
よくある質問
Q. 記帳を頼むのに、税理士と事務代行はどう違いますか?
税理士は、記帳から申告まで通して見られます。税額の判断ができるのが、いちばん大きな違いです。 事務代行にお願いできるのは、領収書や売上の整理と入力までです。申告を税理士に頼んでいて、そこへ渡す前の整理だけを外に出したい、という使い方が向いています。どちらか片方、という話ではありません。
Q. 500万円未満なら、何も届け出なくていいのですか?
建設業の許可の話に限ればそうです。ただし、開業届や確定申告など、許可とは別の手続きは残ります。また、元請から許可の有無を聞かれることはありますし、現場によっては許可を持っていることが条件になる場合もあります。「法律上は要らない」と「仕事が取れる」は別の話です。
Q. 建設業の許可を取るのに、行政書士に頼まないとだめですか?
自分で申請することはできます。禁じられているのは、資格のない人が報酬をもらって他人の代わりに作ることです。ただ、経験年数を証明する資料を集める作業は量が多くなりがちです。そこにかかる時間と、頼んだ場合の費用を見比べて決めることになります。
Q. 家族に手伝ってもらうのは、資格の話にひっかかりますか?
家族が自分の家の領収書を整理したり、本人が決めた内容を帳簿に入力したりすることが、そのまま資格の話になるわけではありません。
ただし、申告書を本人に代わって判断して作る、経費になるかどうかを答える、役所に出す書類を中身から作る。こうした作業は別です。家族だから線がなくなる、ということはありません。
なお、「報酬をもらっていなければ資格の問題にならない」とは、すべての法律で一律には言えません。 税理士法の「業とする」は無料の場合も含みます。行政書士法19条は報酬を得る場合が対象で、条文の作りが違います。
家族に給料を払う形にする場合は、税金・労働保険・社会保険の扱いが出てきます。税理士や社労士に確認してください。
Q. どこに頼めばいいか分からない書類が出てきたら?
まず「どこに出す書類か」を見ます。ただし、建物で決めないでください。 市役所には、税金の書類も国民健康保険の書類も出します。「市役所に出すから行政書士」ではありません。
見るのは書類の種類です。税務の申告や申請なら税理士、建設業の許可などの許認可なら行政書士、労働・社会保険の手続きなら社労士。ここで大半は当たりが付きます。
それでも決まらないときは、中身を見ます。 契約の内容を決める書類や、事実を証明する書類は、提出先が民間でも行政書士の領域に入ることがあります。迷ったら、その書類を持って行政書士に聞くのがいちばん確実です。
まとめ
- 手元の書類から引いてください。 確定申告なら税理士、許認可なら行政書士、もめごとなら弁護士。労災の特別加入は承認を受けた特別加入団体、雇用保険や社会保険の手続きは社労士や各窓口です
- ただし、書類の名前だけでは決まりません。「本人が決めた内容を入力するのか、中身から判断して作るのか」で、頼める相手が変わります
- 線引きは法律ごとに違います。 ある法律の考え方を、別の法律にそのまま当てはめないでください
- 1件500万円未満なら、建設業の許可は要りません(建築一式は1,500万円未満、または延べ面積150平方メートル未満の木造住宅)。税込み。分けて請けたら合計。材料を出してもらったら、その市場価格を足します
- 迷ったら、その書類を持って、いちばん近いと思う資格者に聞くのがいちばん早いです
元請に出す書類と、見積書・請求書、領収書の整理。この入力と整形の部分は、トランジットでお手伝いできます。XのDM(@transit_40)かLINEからどうぞ。
なお最初のご相談では、個人情報の入った書類を送らないでください。 まず、書類の名前・人数・期限を教えてください。元請指定の未記入の様式がある場合は、個人情報が入っていない状態で送っていただければ、中身を見てお見積もりします。
住所・生年月日・保険情報・金額の入ったものは、ご依頼が決まってから、受け渡し方法をご案内します。
出典
- e-Gov法令検索:税理士法(昭和26年法律第237号)2条・52条
- 国税庁:税理士制度のQ&A「2 税理士の業務」(問2-1・問2-3。税理士法基本通達2-1、2-5)
- e-Gov法令検索:行政書士法(昭和26年法律第4号)1条の3・19条・21条の2
- 日本行政書士会連合会:行政書士の業務
- 日本行政書士会連合会:会長談話「行政書士法第19条第1項及び第23条の3の改正の趣旨等について」(2025年11月1日)
- e-Gov法令検索:社会保険労務士法(昭和43年法律第89号)2条・27条・別表第一
- e-Gov法令検索:労働者災害補償保険法(昭和22年法律第50号)33条・35条
- e-Gov法令検索:弁護士法(昭和24年法律第205号)72条
- e-Gov法令検索:建設業法(昭和24年法律第100号)3条
- e-Gov法令検索:建設業法施行令(昭和31年政令第273号)1条の2
- 国土交通省:建設業の許可とは
- 厚生労働省:雇用保険制度Q&A
あわせて読みたい
- 施工体制台帳とは|下請の一人親方が用意する情報
施工体制台帳は、条件に当てはまる元請が作って現場に備え置く書類です。下請で入る一人親方が元請へ出す情報、作業員名簿として載る本人の項目、許可がない場合の扱い、社会保険欄の考え方までを条文から整理しました。
- 見積書・請求書の代行に何を送ればいい?送るものリスト
見積書や請求書の作成を代行へ頼むとき、最初に何を送ればよいかを整理しました。断片的な記録から始められる理由、写真の使い分け、金額はご自身で決めていただく線引き、締め日と提出期限の確認まで、順番に説明します。
- 再下請負通知書とは|一人親方が応援を呼ぶとき、先に確かめる3つのこと
再下請負通知書は、下請が工事の一部をさらに他の業者へ請け負わせたときに、元請へ知らせる書類です。建設業法の条文をもとに、どの現場で必要になるのか、応援を頼むときの契約関係の違い、準備するものと出す時期まで整理しました。