売上はあるのに金が残らない|現場ごとに残す7つの数字と、1日あたりの出し方

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会社にいた頃、現場ごとにいくら残ったかを見るのは、社長の仕事でした。

ただ、これぐらいは残っただろうな、という見当はついていました。 入った人数、かかった日数、使った材料の量、現場の規模。毎日そこにいれば、だいたい分かります。

やりやすい現場は作業が進み、待ちが多い現場は日数が伸びる。その違いは体で感じていました。 ただ、実際にいくら残ったかまでは見ていません。

一人親方として仕事を請けるなら、その体感を自分で数字にする必要があります。

請負金額からその現場に直接かかった費用を引いて、自分が使った日数で割ると1日あたり差引額が出る流れを整理した図

この記事でわかること

  • 現場ごとに残しておく7つの数字
  • 「30万円の仕事」から、いくらが手元の判断材料になるのか
  • 待ちが出て2日延びると、1日あたりがどれだけ下がるか
  • その金額が、まだ利益でも手取りでもないこと
  • 出した数字を、次の見積もりへどう返すか

先に答えを置きます

請負金額だけでなく、「現場別差引額」と「1日あたり差引額」を見てください。

この記事では、次の2つをこう呼びます。税務や会計の用語ではなく、自分の現場を比べるための呼び方です。

呼び方計算
現場別差引額請負金額 − その現場に直接かかった費用
1日あたり差引額現場別差引額 ÷ 自分が使った日数

この金額は、利益ではありません。 自分の労務費をまだ引いていませんし、事務所費・通信費・税金・保険料といった、どの現場にもひもづかない費用も引いていません。

それでも、現場どうしを並べて比べられるようになります。請負金額のままでは、30万円の現場と50万円の現場のどちらが良かったのか分かりません。

1. 請負では、日数が伸びると1日あたり差引額が下がります

請負で受けるときは、当初の金額を先に合意します。 予定より日数が伸びただけで、請負金額が自動的に増えるわけではありません。追加や変更について、別に金額を合意した場合は別です。

つまり、決まったあとで動くのは、自分が何日入るかのほうです。

待ちが出る現場では、日数が伸びます。

  • 前の工程が終わっていなくて、入れない
  • 材料が現場に届いていない
  • 図面が変わって、やり直しになる
  • 段取りの確認で、半日つぶれる

どれも、こちらの技量だけでは決まりません。 ただ、入る日数は増えます。

逆に、やりやすい現場もあります。材料が先に入っている。前の工程がきれいに終わっている。置き場と搬入の道が確保されている。そういう現場では、同じ作業量でも早く終わります。

作業の進みやすさは、現場に入れば感じます。ただ、その体感だけでは、別の現場と比べられません。

進みやすかったという体感を日数に置き換えると、次の現場と比較できます。

2. 請負と常用では、日数が伸びたときの意味が違います

ここでいう「常用」は、建設現場で使われる呼び方です。 あらかじめ決めた1日あたりの金額に、認められた日数を掛けて精算する働き方を指します。

契約の法的な区分は、呼び方だけで決まるものではありません。 労働者にあたるかどうかは、指揮監督の実態や報酬の性格などから判断されます(厚生労働省「労働者とは」)。

そのうえで、数字の動き方はこう変わります。

請負で受けている場合、当初の金額を先に合意しています。日数が伸びただけでは、請負金額は自動的に増えません。 伸びた分だけ、1日あたり差引額が下がります。

常用として合意した条件では、認められた日数に単価を掛けて精算することがあります。日数が伸びれば、金額もその分は動きます。

だから、日数の記録がいちばん効くのは請負です。

ただし、常用でも計算する意味はあります。車の燃料、高速代、駐車場、その現場のために買った消耗品は、自分持ちのことがあるからです。同じ日当でも、遠い現場と近い現場では、差し引いたあとの金額が変わります。

そして、待ち時間や半日を何日分として精算するかは、現場や契約条件によって異なります。

単価、日数の数え方、待機日の扱い。この3つは、入場前に文字で確認しておいてください。 雨で作業ができなかった日の扱いも同じで、雨で現場が止まった日の記事に整理しています。

3. 現場ごとに残す7つの数字

現場が終わったら、この7つを書き留めます。紙でも、スマホのメモでも構いません。

数字中身
1請負金額税抜きか税込みかを必ず書く
2材料代自分が買った分。元請支給なら「支給」と書く
3応援・外注に払った額人工で払ったもの、外注に出したもの
4車両にかかった額燃料、高速、駐車場。その現場分として区分する
5その現場だけの費用機械のレンタル、運搬、産廃、その現場のために買った消耗品
6自分が使った日数・時間1日、半日、時間数など、後から比較できる単位で
7請求日と入金予定日いつ請求して、いつ入る予定か

現場が終わった週に残す7つの数字を、現場ノートと道具のイラストで整理した図。①請負金額と税抜・税込、②材料代と元請支給、③応援・外注費と人工数、④燃料・高速・駐車場、⑤機械・運搬・産廃・消耗品、⑥自分の日数と時間、⑦請求日と入金予定日。記録するタイミングは現場が終わった週。請負30万円、材料7万円、応援6万円、車両・運搬2万円、自分10日、当初8日・待ち2日という記入例も掲載

請負金額は請求書に残りますが、自分が使った日数や時間は、自分で記録しないと残りません。

4番は、区分の方法を先に決めておいてください。 現場ごとに給油するとは限りません。走った距離で分ける、日数で分けるなど、自分の中で一つ決めて、毎回同じやり方で計算します。途中でやり方を変えると、現場どうしを比べられなくなります。

7番は、資金繰りのための数字です。 現場が終わっていても、入金は先です。支払いの条件によっては、2か月以上あとになることもあります(元請の支払いが遅いときの記事にまとめました)。

自分の日当は、費用に入れません。 引いてしまうと、1日あたり差引額を出す意味がなくなります。最後に日数で割って、その結果を見ます。

4. 架空の例で、計算してみます

以下は、計算の順番を示すための架空の例です。相場を示す数字ではありません。 金額は、すべて税抜きでそろえています。

項目金額
請負金額300,000円
材料代−70,000円
応援に払った額−60,000円
車両・運搬−20,000円
現場別差引額150,000円

30万円の仕事を取った=30万円もうかった、ではありません。 引くものを引くと、半分になりました。

ここに、6番の数字を使います。自分が使った日数が8日だったとします。

150,000円 ÷ 8日 = 1日あたり差引額 18,750円

この数字が出て、はじめて他の現場と並べられます。

5. 2日延びると、1日あたりはこれだけ下がります

同じ現場で、待ちが出て10日かかったとします。

請負金額は変わりません。 材料も応援も同じだとすると、現場別差引額も150,000円のままです。

日数1日あたり差引額
予定どおり8日18,750円
待ちが出た10日15,000円

1日あたりが3,750円下がりました。

1日あたり差引額を18,750円のまま保つには、10日 × 18,750円 = 187,500円の現場別差引額が必要です。 実際の150,000円との差は、37,500円です。

ここが、体感と数字がつながる場所です。「あの現場はしんどかった」で終わらせず、何日余分にかかったかを書いておけば、金額に直せます。

ただし、この37,500円は、請求できる金額を示すものではありません。 延びた分を別に精算できるかは、契約内容と、日数が延びた理由によって変わります。待ち時間が、自動的に追加請求できるわけではありません。

国土交通省は、請け負う条件が不明確だと紛争の原因になるとして、建設工事標準請負契約約款を整備しています(国土交通省「建設工事標準請負契約約款について」)。工期や金額を変えられる場面は、契約でどう決めていたかによります。

追加作業や工程変更の指示があった場合は、着手前に範囲と金額を確認してください追加工事を口頭で頼まれたときの記事にまとめました)。

6. 現場別差引額は、利益でも手取りでもありません

現場別差引額には、特定の現場にひもづけていない事業上の支出が、まだ反映されていません。 事務用品、通信費、作業服や道具などのうち、事業に必要な部分がこれにあたります。

さらに、あとから支払うお金があります。

  • 所得税・住民税
  • 国民健康保険料・国民年金保険料
  • 労災保険の特別加入料

一方、自分の働き分は、現金の支出でも必要経費でもないので、費用としては引きません。 この記事では「1日あたり差引額」にして、働いた日数に見合う金額だったかを確かめます。

事業所得は、原則として1年分の総収入金額から必要経費を差し引いて計算します。 その後の所得控除や税額の計算まで含めた確定申告とは、別の段階です。現場ごとの計算は、そのどちらとも違います。

車両の費用には、注意が必要です。 現場に行く車を自家用と兼ねている場合、かかった全額を経費にできるとは限りません。

家事関連費のうち必要経費になるのは、取引の記録などに基づいて、業務遂行上直接必要であったことが明らかに区分できる場合のその区分できる金額に限られます

(国税庁「No.2210 必要経費の知識」より)

現場ごとの7つの数字は、「その現場をどう見るか」のためのものです。税金の計算そのものではありません。経費の考え方は、確定申告の記事に整理しています。

7. 出した数字を、次の見積もりへ返します

同じ現場別差引額15万円を、予定どおり8日で終えた場合の1日あたり18,750円と、待ちを含む10日の15,000円で比較した図。差は1日あたり3,750円。結果を次の見積もりへ返す方法として、①下回らない1日あたりの線を決める、②待ちが出やすい現場は日数を多めに見る、③材料と手間を分ける、の3つを示している

数字を出しただけでは、何も変わりません。 使うのは、次に見積もりを出すときです。

① 1日あたりの線を決める

過去の現場をいくつか計算すると、自分の1日あたり差引額が見えてきます。そこから、「この金額は下回らない」という線を決められます。単価の考え方と見積書の書き方は、人工代の見積書の書き方にまとめました。

② 待ちが出やすい現場は、日数を多めに見る

同じ元請、同じ種類の現場で、過去に日数が伸びていたなら、次はそれを見込んで日数を出します。

これは相手を疑う話ではありません。 現場には、こちらでは動かせない事情があります。それを見込んで日数を出しておけば、途中で無理をしなくて済みます。

③ 材料と手間を分けて出す

材料代が上がった年に、「一式」でまとめていると、何が上がったのか説明できません。分けて出しておけば、次の見積もりで金額が変わったときに理由を示せます。

8. どこに記録するか

専用のソフトは要りません。続けられる場所に置くのがいちばんです。

  • 現場ごとにノートを1ページ使う
  • スマホのメモに、現場名で1件つくる
  • 表計算ソフトで、1行1現場にする

大事なのは、現場が終わったその週に書くことです。 3か月後には、日数も材料の量も思い出せません。

書き方の見本

◯◯マンション 新築(元請=△△建設)
請負 300,000円(税抜)
材料 70,000円 / 応援 60,000円(2人工)/ 車両・運搬 20,000円
自分 10日(当初8日、待ち2日)
請求 9月30日 → 入金予定 11月30日
メモ:前の工程との調整で、予定より2日延びた

最後の「メモ」の1行が効きます。 数字だけ並べても、あとで見返したときに、なぜそうなったのかが分かりません。ひとこと書いておけば、次の見積もりで思い出せます。

3件たまると、比べ始められます

3件は、結論を出す数ではありません。 ただ、印象ではなく、日数や費用を並べて見る入口になります。

  • 1日あたりが高かった現場は、何が良かったのか(近い、材料が支給、待ちがない)
  • 低かった現場は、どこで落ちたのか(日数が伸びた、材料が高かった、遠かった)

同じ元請の現場が何件かあれば、そこの傾向も見えてきます。 次に声がかかったときに、日数を多めに見るかどうかの判断ができます。

帳簿とは別物です。 帳簿は、税務のために取引を記録するもの。現場ごとの7つの数字は、自分が次の判断をするためのものです。ただ、領収書や請求書は同じものを見るので、まとめて処理すると手間が減ります(帳簿のつけ方にまとめました)。

よくある質問

Q. 応援を呼んだ現場は、どう計算しますか?

払った額を3番に入れてください。 人工でいくら払ったか、何人工分かも書いておくと、次に同じ規模の現場を請けるときの目安になります。

Q. 材料を元請が支給してくれる現場は、どう書きますか?

現場別差引額を計算する材料代の欄には、「支給」と書いて0円にします。 ただ、支給ありの現場と、自分で買う現場では、請負金額の意味が変わります。後から見返したときに区別できるよう、書き残しておいてください。

Q. 半日で終わった日は、どう数えますか?

現場別の記録としては、実際に使った時間も残してください。 「0.5日」だけだと、あとで比べにくくなります。相手への請求を0.5日分にするか1日分にするかは、契約条件によって異なります。移動や材料の引き取りも、現場のために使った時間として、別に記録しておいてください。

Q. 1日あたり差引額が低かった現場は、どう見直しますか?

まず、何が原因だったかを分けてください。 見積もりの金額が低かったのか、日数が伸びたのか、材料が上がったのか。原因によって、次にやることが違います。「あの現場は失敗だった」で終わらせないための記録です。

Q. 金額を元請から提示されて請ける場合も、計算する意味はありますか?

あります。 提示された金額をその場で変えられないとしても、終わったあとに1日あたり差引額を出しておけば、次に同じ話が来たときの判断材料になります。手元に数字があるのと、印象だけで話すのとでは、違ってきます。

Q. 消費税はどう扱いますか?

請負金額を書くときに、税抜きか税込みかを必ず書いてください。 混ざると比較できなくなります。ご自身が課税事業者かどうかによっても扱いが変わるので、判断に迷う場合は税務署か税理士に確認してください。

まとめ

  • 現場ごとに7つの数字を残します。請負金額・材料・応援・車両・その現場だけの費用・自分が使った日数・請求日と入金予定日
  • 請負金額から、その現場に直接かかった費用を引いたものが「現場別差引額」です。これを自分が使った日数で割ると、現場どうしを並べられます
  • この金額は、利益でも手取りでもありません。自分の日当も、税金も保険料も、共通の費用もまだ引いていません
  • 請負金額だけでなく、自分が使った日数や時間も残します
  • 待ちが出て2日延びれば、1日あたりは18,750円から15,000円に下がります。ただし、その2日分を精算できるかは契約内容と理由によります
  • 数字を使うのは、次の見積もりのときです。1日あたりの線を決める、待ちが出やすい現場は日数を多めに見る、材料と手間を分けて出す

次に終わる現場から、7つを書き留めてみてください。 3件並べば、印象ではなく数字で比べ始められます。

参考にした公式情報

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